2012年11月21日水曜日

イノベーションの浸透(技術とビジネスモデル)

HBR Blog Networkの”When Business Models Trump Technology” by Karan Girota and Serguei Netessineでは、新技術を普及させるためには新しいビジネスモデルについても考える必要があることを点滴灌漑 (drip irrigation) の事例を用いて説明している。


過去50年の間に人口が倍増し、世界中の多くの地域において灌漑用水は農業生産にとって致命的な制約要因となってきている。こうした問題を解決する手段として点眼灌漑が注目されているが、それ自体は新しい技術ではなく、120年以上前からあったものである。最近注目されるようになったのは、イスラエルのNetafirmが、ビジネスイノベーションにより商業化に成功し、商業用小規模灌漑設備市場において1/3以上のシェアを誇るようになったからである。

だが、当初から上手くいったわけではない。Netafirmは点滴灌漑に近代的な電子制御技術を導入し、収穫量を3~5倍増加させることに成功したが、そのシステムが注目を浴びるようになるのは容易ではなかった。売り手と買い手の間での新技術に係る情報の非対称性、インセンティブの非対称性(Netafirmは売上の最大化、農家はROIの最大化。)が導入の障壁となったのである。

こうした課題を解決するため、Netafirmは”IrriWise Crop Management System”という新しい提案を始めた。それは、システムデザイン、必要な全てのハードウェア、備え付け、システムの定期運転を全て統合したものであり、最も重要なのはNetafirmが自らコストを負担して導入し、その分収量増加の配当をより多く受け取るようにしたことである。これにより、Netafirmの目標は収量を最大化することとなり、情報とインセンティブに係る問題が解決された(Netafirmの綱領も「顧客にとって最高の点滴灌漑設備を造る」から「より効率的に世界が成長することを手助けする」に変更された。)。実際、このビジネスモデルは成功し、大きな成果が双方にもたらされた。

この供給側が設備導入のリスクを引き受け、成果の配当を後回しにするモデルには以下のような利点があった。
  • 専門知識と最新の予測技術を持つNetafirmと農家の間にあったリスク認識の格差が解消された。 
  • 実際、規模と多様な市場基盤を有するNetafirmのほうがより上手くリスクをコントロールできた。

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