企業の成長の源泉は何か
産業セグメント別の成長率を平均すると、ハイテクをはじめとする成長産業よりも急速に成長している成熟産業のセグメントもあることが分かる(欧州の通信産業など)。「成長産業」とか 「成熟産業」と言った定義づけは逆に誤解を招く。
大企業の成長パフォーマンスの違いを分析したところ、ポートフォリオモメンタムが43%、M&Aが35%、市場シェアが22%を占めることが分かった。ただ、これを日常の経営を疎かにしてよいと解釈してはいけない。逆に、ポートフォリオモメンタムによる成長を成し遂げるためには、新興企業が参入してくる中でそのセグメントでの地位を維持する必要があるということを意味しているのである。製品のライフサイクルが短いハイテク産業では、市場シェアの変動が起こりやすく、市場シェアの変動が成長に占める割合は37%と最も高くなった。
大企業の収益成長率に係るマッキンゼーの研究によれば、市場の平均的な見方から距離を置き、動向、将来の成長率、市場構造に対する詳細な視点を涵養していくことが重要である。サブインダストリー、セグメント、カテゴリ、小さな市場に係る洞察は、ポートフォリオ選択に欠かせない。こうしたアプローチが、企業が競争のポイントに係る適切な意思決定を行う際に必要不可欠となる。
これらの決定は企業の死活問題かもしれない。17セクターにおける100の大企業を調査したところ、以下のような予想外の発見があった。
直感に反する結果であるが、日々の業務執行を上手く行うことは、競争の激しい市場でシェアを維持し、また市場の潜在的成長可能性を捉えるためには重要であるが、企業間の成長速度の違いを決定するものではない。企業幹部はどこで競争しており、またすべきであるかについてより注意を払うべきである。 より高い成長をもたらすポートフォリオへのシフト、同業他社をベンチマークとした自社のパフォーマンスの分析、自社をより詳細なセグメントレベルに分解した上での分析が重要である。
これらの決定は企業の死活問題かもしれない。17セクターにおける100の大企業を調査したところ、以下のような予想外の発見があった。
- 売上の増加は生き残りには不可欠である。GDP成長率よりも売上増加率が低い企業は、成長企業による買収などを通して、次のビジネスサイクルでは生き残っていない可能性が5倍高くなる。
- 適時適所で競争することが重要である。高い収益成長率と高い株主還元を持つ多くの企業は自らにとって望ましい成長環境で競争している。また、これらの企業の多くは積極的に買収を仕掛けている。
直感に反する結果であるが、日々の業務執行を上手く行うことは、競争の激しい市場でシェアを維持し、また市場の潜在的成長可能性を捉えるためには重要であるが、企業間の成長速度の違いを決定するものではない。企業幹部はどこで競争しており、またすべきであるかについてより注意を払うべきである。 より高い成長をもたらすポートフォリオへのシフト、同業他社をベンチマークとした自社のパフォーマンスの分析、自社をより詳細なセグメントレベルに分解した上での分析が重要である。
成長を詳細に分析する
欧州におけるテレコム産業は成熟産業として認識されることが多いが、ヨーロッパにおいてトップ10に入る通信会社の年間売上高成長率は、1999年~2005年の平均9.5%であるところ、個別企業を見ると1~25%と大きく異なっている。その最も重要な理由は、各社が異なるポートフォリオを選択しているため、各セグメントからの影響に差があるということである。例えば、ワイヤレスは固定よりも速く成長し、またそれぞれの成長率は国によって大きく異なる。 全体的に高い成長率を誇る産業でも同じである。代表的なハイテク企業の年間成長率は、1999年から2005年まで-6~34%であった。
欧州におけるテレコム産業は成熟産業として認識されることが多いが、ヨーロッパにおいてトップ10に入る通信会社の年間売上高成長率は、1999年~2005年の平均9.5%であるところ、個別企業を見ると1~25%と大きく異なっている。その最も重要な理由は、各社が異なるポートフォリオを選択しているため、各セグメントからの影響に差があるということである。例えば、ワイヤレスは固定よりも速く成長し、またそれぞれの成長率は国によって大きく異なる。 全体的に高い成長率を誇る産業でも同じである。代表的なハイテク企業の年間成長率は、1999年から2005年まで-6~34%であった。
確かに1999年から2005年まで同業他社を上回るパフォーマンスを上げた200社(建設、消費財、エネルギー、金融サービス、ハイテク、小売、公益事業)を見ると、全体的な成長率は異なる。しかし、業界に関係なく、それらの企業のポートフォリオの成長率は、同業他社をアウトパフォームしている。サブインダストリーや製品カテゴリを大陸、地域、国という観点から分解して分析することで、高い成長率の原因が掴めてくる。高成長産業に移行することではなく、現在属する産業内でより成長可能なセグメントを特定し、そこにリソースを集中させることで成長するべきである。
経営陣は、適切な市場を選択し、またポートフォリオを変更する際、ベンチマークを活用することで、成功のチャンスについて非現実的な仮定を置くのを避けることができる。
成長を分解する
市場シェアの位置づけ
データベースに存在する企業の1999年から2005年までのパフォーマンスを上記の成長三要素に分解したところ、年間売上増加率8.6%のうち、5.5%ポイントはM&A、3.0%ポイントはそのポートフォリオのセグメントの市場成長、残りの0.1%ポイントが市場シェアによるものであることが分かった。ただ、これらの数字は大企業の影響を大きく受けており、より迅速に成長し、既存企業のシェアを奪っているような中小企業はどうであろうか。おそらく、新規参入者や中小企業は、単に既存企業のシェアを奪うというようなやり方ではなく、カテゴリ、市場、事業を再定義し、異なるアプローチで競争に臨んでいる。しかし、大企業がシェアを落とす米国、拡大するヨーロッパという具合に国ごとに違いは見られる。
- ポートフォリオのモメンタムは、同社のポートフォリオに組み込まれているセグメントの市場成長を通じて達成している有機的な売上高の伸びである。そこに働きかける方法としては、事業の買収や売却によって市場の成長からの影響を変化させる、新しい製品カテゴリの導入によって市場の成長を自ら創り出す、という二つがある。ポートフォリオのモメンタム(為替の影響を含む。)は、戦略的パフォーマンスの尺度と言える。
- M&Aは買収または売却を通じて収益を売買する無機的な成長である。
- 市場シェアは市場競争を通じた有機的成長を反映するものである。市場シェアは当該企業が参入している各セグメントのシェアの加重平均として定義される。
市場シェアの位置づけ
データベースに存在する企業の1999年から2005年までのパフォーマンスを上記の成長三要素に分解したところ、年間売上増加率8.6%のうち、5.5%ポイントはM&A、3.0%ポイントはそのポートフォリオのセグメントの市場成長、残りの0.1%ポイントが市場シェアによるものであることが分かった。ただ、これらの数字は大企業の影響を大きく受けており、より迅速に成長し、既存企業のシェアを奪っているような中小企業はどうであろうか。おそらく、新規参入者や中小企業は、単に既存企業のシェアを奪うというようなやり方ではなく、カテゴリ、市場、事業を再定義し、異なるアプローチで競争に臨んでいる。しかし、大企業がシェアを落とす米国、拡大するヨーロッパという具合に国ごとに違いは見られる。
大企業の成長パフォーマンスの違いを分析したところ、ポートフォリオモメンタムが43%、M&Aが35%、市場シェアが22%を占めることが分かった。ただ、これを日常の経営を疎かにしてよいと解釈してはいけない。逆に、ポートフォリオモメンタムによる成長を成し遂げるためには、新興企業が参入してくる中でそのセグメントでの地位を維持する必要があるということを意味しているのである。製品のライフサイクルが短いハイテク産業では、市場シェアの変動が起こりやすく、市場シェアの変動が成長に占める割合は37%と最も高くなった。
成長と株主価値のリンク
ベンチマークのため、パフォーマンスに基づいて企業を四分類した。
ベンチマークのため、パフォーマンスに基づいて企業を四分類した。
- Good(先の成長要素において、アウトパフォーム1、アンダーパフォーム1以下):株主へのリターン率(8%)、売上成長率(11%)。サンプルとなった企業の半分くらいが該当。
- Great(先の成長要素において、アウトパフォーム2またはトップレベルのパフォーマンス1、アンダーパフォーム1以下):サンプルとなった企業の15%が該当。
- Exceptional(先の成長要素の全てにおいてアウトパフォーム):サンプルとなった企業の0.5%。
- Poor(先の成長要素において、アウトパフォーム0、またはアンダーパフォーム2以上):株主へのリターン率(0.3%)
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