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2013年4月20日土曜日

失敗しないチェンジマネジメントのポイント

HBR Blogに掲載された"Change Management Needs to Change" by Ron Ashkenasの抄訳。


チェンジマネジメント(組織変革)に関してはその認識が確立され、ツール、トレーニング、書籍など巨額の投資が行われてきたにもかかわらず、組織変革プロジェクトの60〜70%は失敗している。

原因として、チェンジマネジメントについての我々の理解が誤っており、ジョン・コッターの「変革の8段階」(eight successor factors)、スペンサー・ジョンソンの「チーズはどこへ消えた?」(moving cheese)、テレサ・アマビールの「進捗の法則」(The Power of Small Wins)などの基本に立ち返らなければならないという可能性もある一方、チェンジマネジメントの内容は合理的に正しいが、それに実行力が伴ってこなかったという説明も可能である。事実、マネジャーたちの変革先導力を強化するのではなく、人事の専門家やコンサルタントにチェンジマネジメントを外部委託し、その責任を回避することを許してきてしまった。そして、こうしたアプローチのほとんどは失敗する。こうしたアプローチに数年間取り組んできた大手ヘルスケアカンパニーでは、チェンジマネジメントの概念に精通したマネジャーが増えたのみで、新しい取組を考えるための手法としては機能せず、プロジェクトにおける一連の業務の一部となってしまった。

組織が効果的に変革を進められていない場合、次の3点について検討したほうがいい。
  1. 変革を進めるための共通のフレームワーク、言語、ツールを持っているか。多くの選択肢があっても、中身は同じで、見栄えしか変わらないことが多い。重要なのは、誰もが理解する共通の定義、アプローチ、そしてシンプルなチェックリストを持つことである。 
  2. 変革プランがどの程度全体プロジェクトに統合されているか。チェンジマネジメントを付加的な一つの取組ではなく、ビジネスプランに統合し、セットとして扱われるようにしなければならない。 
  3. 効果的なチェンジマネジメントについて、誰が責任を負っているのか。マネジャーなのかスタッフや外部の専門家なのか。変革が系統だって強力に起こるようマネジャーが責任を負わない限り(一定の行動に対する報酬と罰則による動機づけ)、必要なスキルは得られない。 
チェンジマネジメントの重要性については論を待たないが、その効果的な発現はマネジャーのコアコンピタンスによるものであり、代替可能なものではない。

2013年3月24日日曜日

企業のイノベーション力を測定する

HBR Blog Networkの”How To Really Measure a Company's Innovation Prowess” by Scott Anthonyの抄訳。


世界で最も革新的な会社をランキング化しようとしても、意見の違いが出てくる。それは、企業のイノベーション創出力は長続きしないこと、企業のイノベーション機関が上手く機能しているかを伝えることが困難であること、などによる。そして、そもそも「イノベーション」を測定するというは曖昧な行為であり、イノベーションの測定単位について明確なコンセンサスは存在していないが、以下のような測定への取り組みも存在する。

ROII (Return on Innovation Investment)=(イノベーションによってもたらされた利益やキャッシュ·フロー)/(イノベーションへの累積投資額)
*過去の投資の成果、またこれから行う投資の期待値を測定するのにも用いることができる。

1920年代にデュポンがROEを3つに分解することで、より詳細に株主資本収益率を分析したように、ROIIも以下のとおり分解できる。

ROE(株主資本利益率):
· 収益性(売上高に対する当期純利益)
· オペレーション効率(資産に対する売上高)
· 財務レバレッジ(資産に対する自己資本)

ROII(イノベーション投資利益率):
· イノベーションの規模(=財務的成果/成功アイデア数)
· イノベーションの成功率(=成功アイデア数/創出アイデア数)
· イノベーションの投資効率(=創出アイデア数/(総資本+オペレーション投資額)

課題としては、数値の恣意性、共通定義と利用可能な統計の欠如が、ベンチマークを困難にしていることが挙げられる。

2013年3月19日火曜日

プロジェクトマネジメントの3つのポイント

HBR Blog Networkの” The Dirty Little Secret of Project Management” by Joe Knight et al.("Project Management for Profit: A Failsafe Guide to Keeping Projects On Track and On Budget"の著者)の抄訳。


多くのプロジェクトマネージャーは、あまりに多くまたコントロールできない(と思っている)変数を前に、そのプロジェクト管理は稚拙なものとなっている。だが、高速道路やダムやオフィスパークのような巨大なプロジェクト(ソフトウェア開発チームよりも多くの変数に対処)を上手く管理し、成功を収めている企業も現に存在している。それらのプロジェクトマネジャーはどの時点でどのくらい計画からずれているかを知り、顧客に十分な関連情報を伝え、顧客を意思決定過程に取り込んでいる。

確かに、プロジェクト管理ソフトも使われているが、良いプロジェクト管理システム(現時点でのプロジェクトの進捗状況、プロジェクトの完成時期の見通し、予算への影響の見通し)には、高価なソフトウェアを必要としない。ホワイトボードと電卓だけでも数百万ドルのプロジェクトを管理することもできる。実際、以下の事項を支援できる限り、そのシステムは非常に簡単なもので構わない。

重要な変数をフォローする 
マイルストーンだけでなく、収益性に影響を与える要因(対予算の労働時間(進捗状況の把握)原材料費、発注変更、下請け業者の進捗状況)もフォローする必要がある。これらの変化はすぐにプロジェクトに反映されるので、週単位でのチェックが重要である。

チームで情報を共有する
ホワイトボードやデスクトップなどにフォローすべき項目の数字を掲げるとともに、毎週定期的に会議を行うことによって、問題発生の兆候を迅速に把握する。

利害関係者と顧客と最新の情報を共有する
良い情報、悪い情報の両方を随時、利害関係者と顧客と共有することによって、たとえ時間内、予算内でプロジェクトが完成しなくなっても、それに合わせて対応できるようにしておく。顧客の期待を調整し、また顧客が遅れていると認識していない限り、それは遅れているということにはならない。

2013年3月7日木曜日

スモールトーク(世間話)の重要性

HBR Blog Networkの”The Big Challenge of American Small Talk” by Andy Molinskyの抄訳。


自分がドイツ企業のアメリカ子会社@シカゴにマネージャーとして赴任してきたとしよう。会議の合間に郵便物を受け取りに行ったり、コーヒーブレイクを取ったりする際、「よー、デイビッド。調子はどうだい?」とシニアパートナーに声を掛けられ、「いいよ。ありがとう。グリア博士。」とあなたは応える。

上司との良い関係を構築する絶好の機会であるが、何か上司に話す適切な話題はないかと考えているうちにアメリカ人の同僚が割り込んでくる、ざっくばらんな感じで。「ところで、アーノルド。スパーボールの予想を聴かせてよ。ナイナーズのファンですよね。UCバークリーのMBA卒でしたよね。」

この後も会話は続いていくが、あなたはコーヒーを持って自分のデスクにすごすごと戻っていく。あなたはアメリカにおいてはスモールトーク(世間話)がとても重要であることを知っており、またそれを自然に上手にこなす同僚に嫉妬さえ感じる。

アメリカの文化のなかでスモールトークが果たす役割は決して小さくない。技術的に最も優れていたとしても、アメリカで出世していくには、良い職場関係を構築し、維持していくことがとても重要になる。そして、そのために最も重要なスキルがスモールトークなのである。採用面接や取引、会議などのフォーマルな場面、エレベーターや地下鉄のホームでの上司との鉢合わせ、会社のイベントで隣同士になった同僚とのおしゃべり、全てにおいて人間関係構築のために必要となってくる。

だが、たとえば冒頭の会話のように、アメリカ人が他人に調子を尋ねてくるとき、それはあくまで礼儀としての挨拶みたいなもので、実際のところ、ちゃんとした回答を求めているわけではないし、そうした回答はこの場面では適切とは言えない。

それでは、異文化出身者はどのように対応していけばいいのか。

1.自分自身のアメリカンスタイルなスモールトークを構築する
周囲のスモールトークから、話題、トーン、話し言葉とジェスチャーなどを観察し、自分に合ったようにアレンジした上で身につけていく。

2.アメリカのスモールトークに対して、文化的な見地から敬意を払う
あなたが自身の文化的価値観からアメリカのスモールトークを表層的なもの、関係ないし、必要ないと感じているとしても。

2013年3月3日日曜日

ゴシップの効用

HBR Blog Networkの”Go Ahead and Gossip” by Amy Galloの抄訳。


他人の話を当人のいないところでする、ゴシップは失礼であり、感情や評判を損なうものであると教えられている。しかし、現実には誰もが何らかのかたちでゴシップ(肯定的、中立的、否定的なもの全て)に関わっている。また、そこから多くの情報を得ていることも事実である。

特に、会社などの集団においては、フォーマルな情報に加えて、ゴシップなどのインフォーマルな情報が、社内の最新の状況、フォーマルなルートには乗りにくい情報の流通を助けている。また、そうした敏感な情報を共有することで相手の信頼を獲得したりすることもできる場合がある。

誰かの家族や個人的な事柄についてのゴシップからは距離を置くべきであるが、私たちが通常考えるゴシップの多くは肯定的なものか中立的なものである。

ゴシップについて話すことにより、自らの影響力を高めたり、相手にそう感じさせることも可能である一方、ゴシップは自らの評判を傷つける可能性もあるので、話す相手は信頼できる人に限定しなければならない。まだ親しくない相手とは、無害な他愛のない話から徐々に初めていくほうがいい。また、電子メールで送信した情報は拡散してしまうという認識でいたほうがいい。

ただうなずいたり、「そんな話知らなかった」と言っていれば、ゴシップの情報を得ることは可能であるが、否定的なゴシップに遭遇したときは、疑問を投げかけてみたり、貶されている人の良い行いを披露したりするという対処法もある。


ゴシップ対処原則

すべきこと
  • 社内で起きていることについて知るため、インフォーマルな関係を使って情報を集める。
  • ゴシップの伝達手段についてよくよく検討する。
  • 自分の言葉がどう自分に跳ね返ってくるか考える。
避けるべきこと
  • 不要であったり、他愛のないゴシップに関わらない。 (ゴシップは人との関係を築くのに良い手段である)
  • 上司の前でゴシップについて話す。
  • 同僚に対する否定的なコメントに目をつぶる。

2013年1月13日日曜日

オフィスオペレーションの背後にあるロジック

The Org: The Underlying Logic of the Office”の著書であるTim Sullivanへのインタビューの抄訳 (HBR Blog Network)。

オフィスのオペレーションについては既に多くの悲観的な見方が示されているところであるが、組織運営には各種要素間におけるトレードオフが避けられず、環境及び目的に合わせて選択を行わざるを得ない。

Theory of necessary employee disillusionment
ある職務に対してモチベーションが高く、貢献的で有能な従業員を雇うことと、その従業員の行動をフォロー、モニターすることは逆のベクトルであるが、組織として成り立つためには両者のバランスよく行う必要がある。
(当たり前の組織マネジメント(information flow, monitoring, measurement, resource allocation)がもたらす成果について、インドの織物企業などを事例として説明。)

リーダーのいないネットワーク型組織
例えばウィキペディアにもマネジャーはおり、ボランティアだけでマネジメントすることはできない。また、米軍がネットワーク型組織の参考としたアルカイダでさえマネジメントを要素として組み込んでいた(バクダッドのリーダーからカイロのオフィスに宛てた、同胞の服務環境に係る手紙など)。

今後の組織
情報通信に係る技術革新により可能となった自宅勤務、テレビ会議などが、独立した請負人(Independent contractor)のような働き方を可能にしているのは事実であるが、そうした枠組みが機能しない領域もあり、組織の重要性に変わりはない。

パーテイションで区切られたオフィススペース
従業員を監獄に閉じ込めるためではなく、解放するために考え出されたもの。1950年代上層部は個室を与えられ、プライバシーを享受していたが、下位の従業員はそうではなかった。
Robert Propstなどは、こうした状況を改善するため、また20世紀に起こるであろう情報流通量の急増を見越して、1964年大きなテーブルを用いた移動が容易なオフィススペースを提案したが (Action Office)、コスト面、スペースの効率性からクライアントの支持を得ることができず、1968年に現在のようなパーテイションで区切られたオフィススペースが導入された。

2012年12月29日土曜日

大企業がイノベーションを不得意とする理由(戦略の組織適合)

2013年を迎える前に読むべき33のHBR Blog Postsから、“Why Big Companies Can't Innovate” by Maxwell Wessel (HBR Blog Network) の抄訳。戦略の組織適合の話。


大企業はイノベーションに不向きなように組織されており、実際に苦手である。
例えばベビー食品大手のGerberは、陰りの見えだした自社の潜在的成長力を踏まえ、大人向け食品市場に参入したが、失敗した。野菜、果物の選別、処理といった自社の強み、忙しく調理時間の確保できないアメリカの成人向けに健康な食事を提供するという意義(社会的ニーズ)があったにもかかわらず。彼らは”Gerber Singles”という新しいレーベルを立ち上げたが、独自のブランディング、流通戦略を採用せず、提供されるものは既存のものと大差なかった。

この背景には、顧客ニーズよりも大企業が追求しがちな効率性にフォーカスしてしまったことがある。顧客ニーズの充足よりも自社の既存資産の有効活用、社会的意義(社会的課題に対するソリューションの提供)よりも事業利益である。

ただ、この利益追求自体は企業として当然の行為であり、本当の問題はGerberの幹部が効率性を重視し、イノベーションを起こしにくいという大企業の特性を認識していなかったことにある。そうした習性から自由なグループをつくり、必要な権限委譲を行う必要があったのである。それができないのであれば、既存事業をしっかりと行い、株主に配当で還元するほうがいい。


(参考)
イノベーション・パフォーマンスの高め方」:
 戦略、組織両面でイノベーションに必要な要素を満たす。
カタリストを活用した大企業によるビジネスモデルイノベーション」:
 適切な人材配置により、大企業でもイノベーションを起こす。

2012年12月9日日曜日

イノベーションのマネジメント

HBR Blog Networkの”Start Building Your Growth Factory” by Scott Anthonyの抄訳。


David Duncanとの共著 (Building a Growth Factory) における中心テーマは、4つのマネジメントツールにより企業の成長創出能力を強化することである。成長の青写真、アイデアを成長事業に昇華させる生産システム、必要な資源の把握及び配分を可能にするコントロール、そして適切なリーダーシップ、人材、文化である。そして、より詳細な15の要素がある。ただ、そのすべてをすぐに実践しようとする必要はなく、まずその出発点として以下の3点について考えてほしい。

1. 共通言語
これはイノベーションによる成長をシステマティックに成し遂げる上で重要である。例えば、基本的な定義に加えて、自ら(自社、開発チームなど)にとって重要なイノベーションのタイプを特定することである。P&Gは商業、持続可能、変革、破壊、シティはコア、隣接、破壊を掲げ、共有している。あらゆる組織はそれぞれの成長タイプを持っており、大抵の場合少人数のリーダーたちによる午後のディスカッションで生み出される。

2. 詳細な調査
少人数のチームをつくり、イノベーションによる成長の最大の促進要因、阻害要因を特定するというタスクを課す。このチームではレバレッジを利かせられるポイント、取り組みを加速させる最大の潜在性がある分野を特定することが求められる。加えて、全体システムがどのように見えるかという青写真とそれに対応するロードマップ(いつ何が起こるか)の作り上げていく必要もある。経験的には、この作業に6~10週間の時間がかかる。

3. 実証プロジェクト
拡張的、破壊的アイデアに取り組むチームを組織内から探し出さなければならない。そうして立ち上げたチームと強く連携して取り組んでいく方法を見つけなければならない。これによって、現在の能力のうち、何が新たな成長に向けた取り組みを促進し、何が妨げるかが分かるようになる。

2012年11月24日土曜日

イノベーション・パフォーマンスの高め方

HBR Blog Networkの”Solving Your Biggest Innovation Challenge” by Martia Capozzi and Ari Kellenによれば、競争環境を変えてしまうようなイノベーションは、顧客、従業員、株主の誰にとっても好ましいものであるが、大企業にとっては困難な課題である。そこで、代わりに"innovation at scale"(コアビジネスに立脚した上で、新たな製品、サービス、ビジネスモデルによる、反復可能で持続可能な有機的成長を成し遂げること)が推奨されている。

このアプローチも決して簡単なものではないが(調査では6%の企業しか継続的にこうした取組を行っていない。)、全く新しい市場を開拓するよりは手掛けやすいものである。"innovation at scale"を成し遂げるのに必要な要素は以下のとおりである。

1.戦略面
まずは、自己の保有する資産、能力、そして成功をもたらす要素を深く理解する必要がある。戦略が重要であるのは、それがイノベーションを促進するのに必要な構想や焦点を形成するからである。それによって、単にイノベーションに取り掛かるよりも(従業員が)積極的にリスクを取れるようになる。

2.組織面
· イノベーションは小事ではない。
イノベーションを戦略的な計画策定、予算付け、資源配分に統合している企業は、目標を達成しやすい。リーダーシップ(特に経営幹部のリーダーシップ)はイノベーションの成果と密接に関連している。

· オープンで居続ける。
顧客、従業員、その他の利害関係者のアイデアを活用するため、多くの企業がオープンイノベーションの考えを取り入れているが、取り組むべき諸アイデアが定まると、その取り組みは直線的なものとなってしまいがちである。市場動向に留意しつつ、迅速なイノベーションに臨むことで、アイデアをさらに洗練させていくことができる。

· 実行に適した体制を構築する。
組織設計(イノベーションセンター、インキュベーター、研究所)とイノベーションとの間にはっきりとした相関関係を見つけることが難しいが、少なくとも人材を結びつけ、資源を配分し、進捗を把握するという意味では有益である。

· 人材を厳選する。
ボランティアによるプロジェクトの成果は、役割に応じて選出された人材によるプロジェクトのそれを下回る傾向がある。意欲は重要であるが、それでは必要な専門知識と能力を代替できない。

"innovation at scale"
http://ecorner.stanford.edu/authorMaterialInfo.html?mid=2798

2012年11月20日火曜日

チームの規模とパフォーマンスとの関係

HBR Blog Networkの”Why Less Is More in Teams” by Mark de Rondでは、チームの人数とパフォーマンスとの関係についてまとめている。


100年前、フランス人エンジニア、マクシミリアン・リンゲルマン(Maximilien Ringelmann)による簡単な綱引きの実験において、人間の努力はチームが大きくなるほど急激に小さくなることが分かった(リンゲルマン効果)。実験では、8人で引っ張る力は4人で引っ張る力に及ばなかった。当時は、(目的を達成するために必要な)労力を調整することの難しさに起因するものであるとの理屈付けが行われた。

1970年代、これに素晴らしいひねりを加えたのが、アラン・イングハム(Alan Ingham)達である。以下の二つの実験結果の比較である(①上記と同様の単純な綱引き、②参加する他のメンバーには知らせずに、何人かの参加者にロープを引く振りだけするように指示した上での綱引き)。実験の結果、何も知らなかった参加者が示した労力は、どちらの場合でも変わることがなかった(社会的手抜き(social loafing):人数が多くなるほど、結果に対する責任感が小さくなり、労力を投入しなくなる)。

その後、様々な課題に係る同様の実験が行われたが、人々は4人、せいぜい5人のチームを好むことが分かった。それ以下の人数では効果的に取り組むには少なすぎると感じられ、それより多いと手が抜かれるのである。ただ、課題の困難性・複雑性については説明しきれない面もあり、仕事への適用可能性については留保が必要である。

チームの規模を変更することができない場合の対応策については以下の4つの選択肢がある(何もしないで手をこまねいていると、ハイパフォーマーは手を抜いているメンバーをそのままにしている組織に対して不信感を抱き、去っていくだろう。)。
  1. 複雑な課題を管理可能なように分割する(各メンバーが責任を負うべき領域を明確にする。 )
  2. 緊急的状況にあるという感覚を醸成する (自分自身のことよりも優先されるべき事項を与えるということになるが、継続的に行うのは難しい。) 
  3. パフォーマンスの低いメンバーがより多くの責任感を感じるようにする 
  4. フィードバックをオープンに行うことで透明性を高める(怠け者が隠れられないようにする。)

2012年11月12日月曜日

カタリストを活用した大企業によるビジネスモデルイノベーション

HBR の2012年9月号の” The New Corporate Garage” by Scott D. Anthony によれば、アップルに代表されるように大企業でもパラダイムシフトをもたらすようなイノベーションを生み出せるようになってきている。具体的には、大企業の中にいるアントレプレナー(起業家精神を持った人材)やカタリスト(触媒的機能を果たす人材)が、会社の資源、規模、他にはできないようなやり方で地球的課題に対するソリューションを生み出す機敏さ、を活用してイノベーションを生み出すようになってきている。


イノベーションの歴史
  • イノベーターが個人として活躍した第一期(~1915年頃) 
  • イノベーションの複雑化、高コスト化により企業(研究所)主導の取組が主となる第二期(~1950年代) 
  • 企業が過度に大きくまた官僚的になったことに伴い、VCの支援を受けたスタートアップが隆盛する第三期(20世紀後半) 
  • これまでの技術的革新に加えてビジネスモデルのイノベーション(アマゾン、スターバックス、オートネーション(米国の自動車小売最大手で、ネットでの新車・中古車販売を行っている。))も含むようになった第四期(2000年くらい~) 
に分類され、現在、オンラインツールによりイノベーションに係るコストが著しく低下したことにより、起業が容易になる一方、その後の競争が激化、長期化している。


企業におけるカタリストの役割
企業は、戦略とイノベーションに係る活動を分権化、分散化するに連れて、その敏捷性が増し、カタリストにとって快適な環境となってきている。カタリストは、地球的規模の課題解決のような大きな野望によって動機づけられいる。そして、イノベーションを生み出すため、会社内部と外部との間にネットワーク若しくは連携を形成するといった役割を果たしており、以下のような事例がある。

メドトロニックの健康な心臓プラグラム
ビジネスモデルイノベーションの事例として、医療機器を製造販売するメドトロニックが、インドにペースメーカーを浸透させていく際に、地方における無線通信を活用した遠距離診断、地場のパートナーと連携による低所得者のためのファイナンスの開発、地元のドクターとの強い関係構築、ペースメーカーの認可等に総合的に取り組んだことが挙げられている(個々の項目としては模倣可能であるが、全体的に行うのは(少なくともスタートアップには)容易ではない。)。さらに、健康な心臓プログラムは、インドでのプレゼンスを増大させるビジネスモデルの構築を指示されたKeyne Monsonという同社のカタリスト(触媒として機能する人材)が、インド支社内の賛同者を見つけ、また外部の協力者(アショーカ財団)を初期の段階からプロセスに参画させ、協働することで成し遂げられた。

・ユニリーバの持続可能な生活計画
同計画の一つの取組として、発展途上国の人々に安全な水を届けるため、ユニリーバはYuri Jain副社長に世界の浄水ビジネスを任せることとした。彼は、全世界のユニリーバの研究者100人を動員し、品質を保ちながら低価格な家庭用浄水器ピュアイットを開発し、また学校や消費者にこの新技術を受け入れてもらうため、外部の協力をリストアップし、NGOをパートナーとするなどしている。

シンジェンタの生産的な農業
アグリビジネスを世界的に展開するシンジェンタは、それまで大規模農場に集中していたが、革新的な手法で飢餓に取り組むため、Nick Musyokaを全く分野の異なる消費財メーカーから招いた。彼はカタリストとして、1980年代に登場した小袋モデル、そして小売業者を通じた小規模農家の教育を通して世界中の小規模農場の生産性改善に取り組んだ。

・IBMのスマートシティ
IBMにおける発明の大家であり、カタリストでもあるColin Harrisonは、パルミサーノCEOに直接報告できる本社戦略チームにベンチャー的環境を形成するため、抜擢された。IBMは、研究開発からマーケティングまで、VCに支援されたスタートアップには望むべくもない、その多岐にわたる資源を有しながら、イノベーション第三期の間はその統合に苦労し、うまく活用できていなかった。具体的には、サービスに係る識見、ウェブの結合性、そして物理的センサー、作動装置、RFIDチップを用いた効率性の改善をどのように結び付ければよいかということであったが、Harrisonはアブダビの二酸化炭素中立、ゼロエミッションを目指す都市計画プロジェクトに出会い、そして個別のインテリジェンスを統合するスマートシティという発想に到達した。

こうしたカタリストが企業内で活躍できるよう、企業はオープンイノベーション、システマティックなイノベーション、意思決定メカニズムの簡素化・分権化、学習への集中、失敗に対する寛容を成し遂げる必要がある。そして、カタリストのような高度人材を惹きつけるには、経済的インセンティヴではなく、自己決定権、専門的追及への機会付与、目的意識の刷り込みが必要となる(Daniel H. Pink “DRiVE”)。


この論文では、各時代状況に応じたイノベーションの作法が検討され、現在はビジネスモデルイノベーションの時代であり、その担い手は大企業であるとしている。具体的には、大企業がその豊富な資産という強みを活かしつつ、柔軟性の欠如、視野の狭さといった弱みをカタリストを活用して克服していくというかたちが提唱されている。この点については全くそのとおりであるが、そもそもイノベーションとは多くの失敗の上に積み重ねられるものであり、必ずしも成功するものではないことを考えると、挑戦の数を増やしていくことも重要である。そうした観点からはカタリストとなるべき人材の育成、各従業員のカタリスト的要素の涵養により、組織全体でイノベーションを行うような仕組みづくりが必要であり、それはカタリストと協働した従業員が、その思考、経験を伝播していくことにより、可能となると思われる。

2012年11月6日火曜日

巨大かつ俊敏な組織のつくり方

HBR Blog Networkの”Can Bigger Be Faster?” by Mark Boncheck and Chris Fussellは、自然界においてはトレードオフの関係にある規模とスピードを、組織が同時に達成する方法についてまとめている。


Geoffery West: The surprising math of cities and corporations“に依拠しつつ、生物界と都市を対比させ、ネットワークにより規模とスピードを同時に達成することが可能となるとしている。都市、コミュニティ、フェイスブックやツイッターのようなバーチャルなコミュニティは脳と同様に、規模が大きくなるほど変化に富み、創造的になるという特徴を有している。


そして、残念ながら現代の企業はそのトレードオフから抜け出せていないが、組織をネットワークとして再認識することにより変化できるとして(お手本として、9.11を契機にネットワークに取り組んだアメリカ軍が挙げられている。)、そのための4つの戦略を提示している。

(1)関係の構築
通常、企業内の各個人はその上司、同僚、直属の部下といった関係しか形成していないが、まずはより多くの関係(特にこれまで組織間の繋がりがなかった部分において)を構築することから取り掛かる必要がある。

(2)目的の共有 
合意、そして目的を共有しているという意識を形成することにより、協働が可能となる。

(3)意識の共有 
現在地と目的地を認識し、また共有することで、迅速かつ効果的な行動をとることができる人間に情報が提供されるようになる。

(4)反対(多様性)の促進 
服従ではなく多様性に適合するにより、集団思考、イノベーション、組織的頑健性を生み出す。


この投稿では、フォーマルな組織の中でのネットワークがテーマとなっているが、定型的業務、組織的階層に基づく関係に比べて、より広範囲かつ関連性の薄いノード間でコネクションを構築、維持するにはかなりのコストがかかる。そのため、現実のところ、その多くはインフォーマルな関係として成り立っているのではないだろうか。

2012年10月31日水曜日

イノベーションを起こす3つのアプローチ

HBR Blog Networkの”The Less-is-Best Approach to Innovation” by Matthew E. Mayは、余分なものをそぎ落とす引き算の発想により、イノベーションに至る3つのアプローチを紹介している。

機能を絞り込む 
今ではフェイスブックに買収されるほどに成長したインスタグラムであるが、その成功はユーザーに提供する価値を明確化し、ユーザーが使いやすいように機能を絞り込んだことにあった。

手綱を緩める 
· 役職のないフラットな、チームワーク重視の企業、Gore-Tex。
· 上司のいないビデオゲーム会社、Valve。
· 自分のスキルを元に、その追求すべきタスクを自ら発掘することを求めるトヨタ。
· 社長や上司のためではなく、顧客のために仕事をしろと言って、全ての管理部門を廃止したフランスの自動車部品会社(従業員数600人)、FAVI。

神経を落ち着かせる
例えば、瞑想することにより、意識を高め、集中力を上げ、そして創造的な閃きが生まれる。瞑想は実際、グーグル大学でも2007年からコースの一つとして取り上げられている。


単に思いついたものを書き連ねているという感じで、正直使いづらいが、備忘録として。

2012年10月27日土曜日

マネジメントの簡単な秘訣

Inc..comのGeoffrey Jamesによる”World’s Simplest Management Secret”では、世界で最も簡単なマネジメントの秘訣を紹介している。


人間を集合的にマネジメントすることはできない。マネジメントできるのは個々の人間のみである。

みんなの前で称賛されることで成長する者もいれば、そうしたことを不快に感じる人間もいる。
金銭的報酬が全ての人もいれば、課題に挑戦することで駆り立てられる人もいる。
メンターが必要な人もいれば、そうでない人もいる。

ポイントは個々人をその望むようにマネジメントすることであり、そのためには個人個人に尋ねてみるしかない。「どのようにマネジメントされたいか。」、「あなたの成長、成功を支援するために自分に何ができるか。」、「どのようにマネジメントされるのは嫌か。」等、しっかり聞き取り、可能な限り、コーチング、モチベーション、報酬を各個人に合わせて調節する必要がある。 



各個人に適合した個々のマネジメント手法も重要であるが、そうした手法を採用するに至る過程で各個人の意向を汲み取る仕組みがあるということも納得感の醸成に繋がると思われる。

また、このような個々の社員にコミットできる仕組みを、それに見合ったコストの範囲内で構築できるかどうかが組織としての成否の分かれ目になるのだと思われる。

2012年10月18日木曜日

神経科学の知見を活用した組織改革

HBR Blog Networkの”This is Your Brain on Organizational Change” by Walter McFarlandによれば、激化する競争、グローバリゼーション、技術革新、金融不安、政治的不安定、そして変化する労働力構成などがよりスピーディに、またこれまでとは違う形での組織変化を求めているのに対し、学問的にも、実践的にも十分な発展が見られていない。


いくつもの課題のうち、重要なものの一つとして、従業員をうまく関与させられていないということが指摘されている。組織改革より新規の組織設立のほうが楽だと言われるくらいに。具体的には、「人間の持つ変化への抵抗」が大きな障害となっているわけであるが、どのようにすれば、従業員の支援と創造力(組織改革の際に最も重要な属性)を効果的に引き出すことができるのであろうか。


神経科学、特に脳に係る研究(社会、認知、情動)が、現実に応用可能な知見を提供している。2012NeuroLeadership Summitにおいて、神経科学と組織改革の繋がりについて以下のような点が議論されている。

・現在進行形
変化は常に従業員を恐れさせ、また驚かせる。

・火事場の演出の必要性
従業員を駆り立てるために、明示的、黙示的に恐れが利用されている。

・トップダウンの組織改革
ごく少数の人間によって改革が主導され、コミュニケーション不足やその失敗が見られる。

例えば、「火事場の演出の必要性」について、神経科学の見地からは、従業員をプラスの方向に導くというよりは不快にさせるものであるということが分かっている。また、「トップダウンの組織改革」については、恐怖を引き起こすに過ぎない。


職場における社会的側面をより良くマネジメントしていくには、ステータス、確実性、自律性、関係性、公平性といったニーズが満たされる必要がある(SCARF model)。こういった点を考慮し、以下のように変化をこれまでと違った観点から捉える必要がある。まずは、人間というものをモノではなく、競争力の源泉として捉える。つまり、組織改革を常在する危機としてではなく、組織をより良くマネジメントするために必要な準備をするためのものと捉えるということになる。


SCARF model(スカーフモデル)



人間の脳の統制原理は危機の最小化と報酬の最大化に集約され、リーダーやマネジャーが影響力を発揮するにはこの点を念頭に置かなければならない。具体的には以下の5つの要素を考慮する必要がある。

Status(ステータス) 周囲の人間との関係において自分がどこに位置しているか、どれだけ重要であるか。

Certainty(確実性) どれだけ未来を予測できるか。人間の脳は常に安定性を求め、あいまいな物事を予測しようと働いている。

Autonomy(自律性) 人間は自ら統制できない、選択できない状況に対してストレスを感じる。

Relatedness(関係性) 敵よりも味方といるときのほうが安全と感じること。知らない人間の中に投げ込まれたときに、たとえば会社においてバーチャルなチーム、多様な出自を持つ人間によって構成されるチームで活動する際に、人間はストレスを感じる。

Fairness(公平性) 人々の間で等価交換が行われているという認識。評価の透明性、客観性が重要となる。

2012年8月30日木曜日

多国籍企業にしかできない世界市場での戦い方

Vijay Govindarajan and Gunjan Baglaの”How Big Companies Beat Local Competition in Emerging Markets”によれば、新興国の地元企業の方がより地元のニーズに精通し、有利に競争を進めることができると考えられているが、多国籍企業にはある新興国のマーケットニーズに合わせて開発された製品なりサービスを他の新興国、場合によっては先進国にも応用できるというアドバンテージがある。


具体例として、インドで開発した家庭用浄水器のメキシコでの販売に成功したユニリーバ、インド市場向けにインドで開発したSmart building Routerを世界展開するシスコシステムズ、インドで開発したエアコンを他の熱帯気候の国々にも販売しようとするパナソニック、インドで高い需要がある通勤用の低価格バイクを開発し、他の新興国にも販売しようとしているヤマハ、医療用スキャナーをヨーロッパとインドのエンジニアでデザインしているシーメンスが取り上げられている。


そして、先進国の多国籍企業が、世界中に散らばった製品開発やエンジニアリング能力を活用するための(実践的な)4つのポイントを挙げている。

・DFSS*などの技術を利用して、より質の高い製品開発やエンジニアリングを行う。

・低価格の三次元プリンターを使って、プロトタイプを同時的に世界でつくる。

・スカイプなどを使って低価格でビデオ会議を開き、世界同時的にコラボレートしていく。

・蓄積してきた知的財産を新興国からの革新的なアイデアを結びつける。


なお、多国籍企業が新興国市場に相対する中で革新的なアイデアが生まれ、そしてそれを全世界に展開できるようにするには、上記に加えてDiversity Managementの視点が欠かせない旨、指摘しておきたい。簡潔に言えば、新興国をはじめ多様な人材をしっかり経営の中核に組み込むということだ。


* DFSS (Design for Six Sigma) とは、製造プロセスの改善に焦点を置くDMAIC (define, measure, analyze, improve, control) の次なるステップとして、製造時・使用時の不確定要素に対する頑健性を設計時に高めておくアプローチ。

2012年8月21日火曜日

大統領(リーダー)に必要な資質

John Ryanの“Is Obama or Romney a better leader? How to judge.”に大統領に必要な5つの資質が掲げられている。組織のリーダーにも通じる部分があると思われる。


1)自己認識
自分の長所短所を把握しているか。初代アメリカ大統領ジョージ・ワシントンはもともとはすぐカッとなり、愚かな言動をする人だったが、そのことを認識し、何年も改善に努め、大統領就任時にはほとんど矯正していたという。

2)ビジョン
組織また人々の行動を引き起こすような、説得的な将来展望を示しているか。フランクリン・ルーズベルト大統領は大恐慌の中、経済成長の促進と生活不安の除去の双方に上手く配慮したニューディール政策を打ち出し、実行した。また、孤立主義からの転換に成功し、世界におけるアメリカの確固たる地位の確立を果たした。

3)チームづくり
(自己認識とも関連するが、)自らの欠点を知り、それを補う人材を周囲に配置しているか。エイブラハム・リンカーン大統領は大統領就任時、優秀な人材も影響力のある人材も周囲におらず、数々の失敗を犯したが、政敵をもチームに加え、幅広い情報、意見の中からより良い判断を下すようになっていったという。

4)失敗から学ぶ。
リーダーシップの核心は判断力にあるが、それは失敗を経て獲得されるものである。重要なのはそこからどれだけのことをいかに早く学ぶことができるかである。ジョージ・ワシントン大統領も独立戦争開戦初期は判断ができなかったり、誤った判断を下していたが、そこから素早く学び、同じ失敗は二度と繰り返さなかったという。

5)(政治という)システムを機能させる。
公共善の促進が政府の仕事だと言われるが、単純に市民の望むものを提供すれば済むものでもなく、議会、マスコミ、利害関係者等様々な主体に目を配る必要があり、それら全体を政治というシステムの中に組み込んで機能させていかなければならない。第二次世界大戦で米軍及び連合国軍を見事指揮したアイゼンハウアー大統領が例として挙げられている。


ということで、リーダーシップのポイントはおおむね押さえられていると思われるが、上記で紹介されているのはマスメディアが登場する前の大統領達であり、これにスピーチ力を加えておく必要があるだろう。ちなみに、ソーシャル・メディア時代への移行は大統領の資質というよりは、どう付き合っていくかという戦略の枠組みで考えるべき問題だろう。

2012年8月19日日曜日

単純化することで複雑な状況に対応する。

HBR The Magazine, September 2012に掲載された“Simple Rules for a Complex World”によれば、複雑化する状況に対して、戦略を複雑にして対応するのではなく、単純かつ具体的なルール(Simple and specific rules)を作り上げ、共有し、実行することが重要である。


その根拠としては以下のものが挙げられている。

・各種意思決定や活動を会社の目標に連携させやすい。
陳列するジャムの種類に応じた購買率の変化に係る実験によれば、過剰な選択肢を前にして、人は思考停止してしまいやすい。

・それぞれの現場の状況に対応しやすい。
創造性が求められる局面では、効率性よりも環境適応性が重要であり、単純なルールのほうが適している。

・調整が促進される。
組織横断的な議論を通じて目標や意識が統一され、組織的な合意を経た意思決定の判断枠組みとして機能する。

・より良い意思決定ができる。
複雑な意思決定モデルがもたらす、より重要度の低い情報や不確実でよく分からない想定から解放され、重要な事項に集中できるようになる。


では、どのようにして単純なルールをつくるのか。

・戦略的観点からのボトルネック(障害)を具体的に特定し、かつ取り組むべき優先順位を付ける。

・経験に基づく意見よりも歴史に基づくデータを重視する。

・実際にルールに基づいて行動することとなるメンバーにルールを作らせる。

・ルールは具体的でなければならない。

・状況の変化とともに、ルールは見直されなければならない。


つまり、先に紹介したESQi(顧客満足度指数=「大変満足した」回答者数/調査回答者数)とも関連するが、ルールが単純であるほど理解しやすく、また具体的であるほど行動に結びつけやすく、組織内での共有及び実行が容易であるということである。正直、この論文に目新しい点はなく、どこでも耳にするような話だが、常に意識しておく必要がある。

2012年8月18日土曜日

当事者意識の付与によるモチベーションの向上

今年4月26日にHBR Blog Networkに掲載された”Increase Your Team’s Motivation Five-Fold”によれば、時間と手間はかかるものの、リーダーが単に命令するよりは意思決定過程にチームメンバーをさせたり、自ら決定させたほうが、当事者意識(ownership)が高くなり、実行(Implementation)段階におけるモチベーションが向上する。


いくつかの企業における実例とともに、ある宝くじを使った実験結果を紹介している。まず実験参加者を二つに分け、片方のグループには既に番号が書かれた札を渡し、もう一方のグループには自ら好きな番号を札に書かせた。各々の実験参加者が自分の札にどの程度の価値を見出すか測定したところ、自ら番号を書いたグループは、単に番号札を渡されたグループに比べて5倍の対価を自らの札に対して払うという。


ここで思い浮かぶのは、Richard M. RyanとEdward L. Deciによる自己決定理論(Self Determination Theory)である(”Intrinsic and Extrinsic Motivations: Classic Definitions and New Directions”)。モチベーションを内的動機づけ(自己目的的な活動)と外的動機づけ(経済的報酬など)に分類し、前者のパフォーマンスが後者のそれを上回るとしている。そして、内的動機づけは、自分はできるという有能感(Competence)、自分で決めているという自律性(Autonomy)、理解されている、関心をもたれているという関連性(Relatedness)に基づくものである。先のチームメンバーの包摂(Inclusion)、権限委譲(Delegation)が、理論的にもモチベーションの向上に有効であることが分かる。


ただ、注意しなければいけないことは、内的動機づけは対象となっている活動が新規性、挑戦し甲斐、美意識といった観点から対象者を惹きつけるものでないとあまり機能しなくなるということである。簡単に言えば、いくらチームメンバーの主体性を尊重する方法を採ったところで、そもそもやろうとしていることがつまらないと意味がないということになる。

2012年8月14日火曜日

アイデア実現のため協力者をつくる

今年4月25日にHBR Blog Networkに掲載された "How to Create Raving Fans” は、アイデアを実現させるためには協力者(fans)をつくることが重要だとしている。なぜなら、アイデアに係る自己の理解の深化・確認、目標達成に資する異なる発想の獲得、人的・物的・時間的資源の獲得、アイデアの周知につながるからである。


そして、アイデアの実現は協力(候補)者への売り込みや説得(selling)ではなく、それらの人が自ら納得した上での自発的な協力を得ること(enrollment)によって達せられる。


では、具体的には何をすればいいのか。

・他者をコミットさせようとする前に、まず自らがそのアイデアに対して真にコミットする。

・アイデアの意義、プラス・マイナス全ての情報を提供することにより、協力者との間に強い信頼関係を構築する。ここで理解を得られなければ、真摯にアイデアの失敗を受け入れる。

・協力者に抽象的な協力(open-ended commitment)ではなく、具体的な助力を依頼する。


上記ブログでは上司への売り込みや提案のタイミングは資源が必要になったときとしているが、この点は組織風土や上司の性格にかなり依存するものであり、それぞれの環境下における細心の注意が必要であろう。