2012年8月18日土曜日

当事者意識の付与によるモチベーションの向上

今年4月26日にHBR Blog Networkに掲載された”Increase Your Team’s Motivation Five-Fold”によれば、時間と手間はかかるものの、リーダーが単に命令するよりは意思決定過程にチームメンバーをさせたり、自ら決定させたほうが、当事者意識(ownership)が高くなり、実行(Implementation)段階におけるモチベーションが向上する。


いくつかの企業における実例とともに、ある宝くじを使った実験結果を紹介している。まず実験参加者を二つに分け、片方のグループには既に番号が書かれた札を渡し、もう一方のグループには自ら好きな番号を札に書かせた。各々の実験参加者が自分の札にどの程度の価値を見出すか測定したところ、自ら番号を書いたグループは、単に番号札を渡されたグループに比べて5倍の対価を自らの札に対して払うという。


ここで思い浮かぶのは、Richard M. RyanとEdward L. Deciによる自己決定理論(Self Determination Theory)である(”Intrinsic and Extrinsic Motivations: Classic Definitions and New Directions”)。モチベーションを内的動機づけ(自己目的的な活動)と外的動機づけ(経済的報酬など)に分類し、前者のパフォーマンスが後者のそれを上回るとしている。そして、内的動機づけは、自分はできるという有能感(Competence)、自分で決めているという自律性(Autonomy)、理解されている、関心をもたれているという関連性(Relatedness)に基づくものである。先のチームメンバーの包摂(Inclusion)、権限委譲(Delegation)が、理論的にもモチベーションの向上に有効であることが分かる。


ただ、注意しなければいけないことは、内的動機づけは対象となっている活動が新規性、挑戦し甲斐、美意識といった観点から対象者を惹きつけるものでないとあまり機能しなくなるということである。簡単に言えば、いくらチームメンバーの主体性を尊重する方法を採ったところで、そもそもやろうとしていることがつまらないと意味がないということになる。

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