以前からアメリカへの製造業の回帰(Reshoring(リショアリング))はよく話題になっていたが、一年前にBCGが発表したペーパー"Made in America, Again”を契機に、さらに議論が活発化し、現在の大統領選でも声高に叫ばれている。
話としては、中国の人件費が生産性の伸びを大きく上回って高騰しており、また他の生産に係る費用(土地代、電気代など)も大きく上昇しており、米中の生産コストはかなり接近し、中国の抱える知財、労働争議等の各種リスクを考慮すると、国内向けの資本集約的なものを中心に製造業がアメリカに戻ってくるというもの。
だが、大前研一が“米国製造業の「国内回帰」は虚構にすぎない”で指摘しているように、国内回帰の事例として挙げられているものは小規模のものが多く、また新たな低コストの生産拠点をバングラデシュ、インド、インドネシア、タイ、カンボジア、ベトナム、中南米、アフリカなどに求めることで対応されるだろうとしている。
では、どちらが正しいのだろうか。個人的には、一定程度リショアリングが起こったとしても、「製造業の国内回帰」と言うほど大規模には進まないのではないかと考えている。少なくとも雇用に結びつくような国内回帰は限定的だ。
"Made in America, Again”では、確かに人件費の低い他の代替生産拠点国(タイ、インドネシア、ベトナム、カンボジア、メキシコ)にも言及されているが、インフラ整備、労働の質、供給ネットワークの面で中国に及ばないとして一蹴している。
だが、東南アジア諸国で活発な自動車生産を見れば、そんなことがあてはまらないことは自明の理だ。現に中国自身がそう認識しているようでもあるし(“時代は「メード・イン・東南アジア」へ?海外企業が中国から相次いで撤退-中国紙”)。
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