HBR Blog Network ”Maintaining a Unified Brand in a Fragmented World” by Dae Ryun Chang and Don Ryun Changの抄訳。
ブランドマネージャーは、まずます断片化する市場においてどのようにしてブランドを運営し、ソーシャルメディアによって主導権を奪われた顧客へのアプローチをどのようにして取り戻すかを考えなければならない。
例えば、Gapのロゴ変更での失敗と、スターバックスのリブランディングと新しいセイレーンのロゴでの成功との間には、企業が、理念として、またマネジメントシステムとして、「トランス・ブランディング」を巧みに組み込んだかの違いがある。多様化した市場間を上手く結びつけ、効果的に展開していくためには以下の点が重要となる。
1)移行する
変化する市場環境に過度に適応しようとすると、既存の顧客の信頼を失いかねない(急進的にロゴ変更を行って失敗したGapの事例)。だが、企業の顧客、支援者を巻き込んで、時間をかけて統合していくことによりそのブランド再構築の取り組みは成功しやすくなる。一方、スターバックスはセイレーンを使い続けることにより既存顧客にその親しみを感じさせる店舗での体験が変わらないことを伝えるとともに、「Starbucks Coffee」という文字を削除することによりそのビジネスがコーヒー以外にも広がっていくことを伝えている。
2)異なる市場を超越する
詳細にセグメントされた、それぞれの需要に応えるのではなく、市場の差異を超越できるようなアピールを見つけることで、消費者を総体的に捉える取り組みが必要である。PsyのGangnam styleが事例として取り上げられている。
3)変態する
スマートフォンアプリのようなデジタルの領域が新しい戦場となっているが、ブランドの諸要素は動きのある小さい画面で目に付くものである必要がある。DC comicsの動きのあるロゴが紹介されている。
4)透明である
ドミノピザは顧客からの不満、品質上の問題を公開し、議論し、それをどのようにして乗り越えていくかというキャンペーンを行い、注目を集めた。ブランドの透明性は真摯に顧客からの不満に対応する際に重要となる。なぜなら不満を放置されたとき、それらはソーシャルネットワーク上で急速に拡散していくからである。企業はブランディングに影響を及ぼす他の要因(信頼、神秘性、物語性、驚き)との間で最適なバランスの中で透明性を追求していく必要がある。
2012年12月19日水曜日
2012年11月29日木曜日
ソーシャルメディアのROI_VOAL
Email、検索、ディスプレイといったツールを用いたオンラインマーケティングでは数字、ROIなどに基づいた検討、検証が行われているが、フェイスブック、ツイッターなどのソーシャルメディアを使ったマーケティングについては、その点が忘れ去られている。
HubSpot(インバウンドマーケティングソフト会社)では、各ソーシャルメディアでのつながりが企業の最終的な損益にもたらす影響の定量化を行っており、そのために”Value of a like” (VOAL) という算式を生み出した。
VOAL = (L/UpM) * (LpD*30) * (C/L) * CR * ACV
L (Total Likes): あなたのソーシャルメディアアカウントに繋がっている人達の数。フェイスブックでは「いいね!」の数であり、ツイッターではフォロワー数となる。
UpM (Unlikes-per-Month): 一ヶ月間にあなたのソーシャルメディアアカウントを好きではなくなった人達の平均数。フェイスブックでは「いいね!」の取り消し数、ツイッターではフォロー解除数となる。
LpD (Links-per-Day): 一日当たりあなたがリンクを投稿する平均数。フェイスブックではあなたのサイトに導くリンクの一日当たり投稿数であり、ツイッターではそうしたリンクを一日につぶやく回数である。
C (Average Clicks): あなたのソーシャルメディアアカウントのリンクからあなたのサイトに訪問した人達の数。
CR (Conversion Rate): あなたのサイトの訪問者が購買したり、見込み客(lead)となったりする平均的比率(転換率)。これはあなたのサイトを訪問した全ての人達の平均値であるが、あなたのソーシャルメディアアカウントからのトラフィックに絞ることで、より正確に測定することができる。
ACV (Average Conversion Value): あなたのサイトの訪問者が転換したこと(購買すること、見込み客となること)の平均的な金銭価値。CR同様に、あなたのソーシャルメディアアカウントからのトラフィックに絞ることで、より正確に測定することができる。
L/UpMは、個人ユーザーがあなたのソーシャルネットワークを購読してくれると推定される平均的期間を表している。そして、算式の残りの部分はその期間中にあなたのサイトリンクを見る回数と転換のもたらす価値ということになる。そしてこれらの計算を簡単に行うため、ValueofALike.comというサイトが作られている。
2012年11月4日日曜日
マーケットリサーチを最大限に活かす
HBR Blog Networkの”Using Market Research Just for Marketing Is a Missed Opportunity” by Werner Reinartz によれば、ほとんどの企業がカスタマーインテリジェンス(顧客データの収集と分析)を顧客との関係構築、改善に利用している。顧客の購買サイクルを知ることでより効果的にプロモーションできるようになるということである。しかしながら、そうした情報をイノベーションに利用できている企業は少ない。
まず、既存顧客から集めたデータを新製品や新サービスの開発に結び付けることができる。フォークリフトを製造しているFenwickでは、センサーとRFIDを使って各フォークリフトの利用状況に係る情報を集め、遠隔監視、イントラネットの開発、運転手への講習といったサービスを開発し、そうしたサービスからの収入が売り上げの半分を占めるまでに成長しているという。
また、インターネットに係るカスタマーインテリジェンスについて、購買プロセスの簡易化、購買履歴、輸送状況の追跡、製品への感想といった既存顧客に係る情報だけでなく、潜在的顧客がネットに発信している情報を分析することで、その可能性をより広く捉えることができる。
例えば、ドイツ最大のヘアケア製品会社であるSchwarzkopfでは、自社サイトのパフォーマンス(トラフィックやセールス)を向上させるため、数百万人がブログにポストしたヘアケアに係る情報の分析を行った。その結果、顧客がブランドや製品の特性よりもそれぞれのヘアケアの問題を気にかけていることに気付いた。そして、ブランドや製品のリストに代えて、髪の特徴にフォーカスして自社サイトを再構築することによって、そのトラフィックを3倍にすることに成功した。
こうした情報を入手するための課題は、自らにとって最良のデータが存在するオンラインの場所や集団を特定することにある。
なお、Schwarzkopfの事例については、パフォーマンスの向上が主にトラフィックの増加によるものであるという点に注意が必要であるように思われる。サイトを確認してもらえれば分かることであるが、髪に係る情報は豊富に提供されているが、個別製品に係る情報はあまりなく、また目立つようにも配置されていない。おそらくウェブではヘアケア市場におけるブランドの強化、新規の見込み客の呼び込みにのみ注力し、直接的な売上アップは店頭やCM等、別のポイントで行おうと考えているのであろう。
まず、既存顧客から集めたデータを新製品や新サービスの開発に結び付けることができる。フォークリフトを製造しているFenwickでは、センサーとRFIDを使って各フォークリフトの利用状況に係る情報を集め、遠隔監視、イントラネットの開発、運転手への講習といったサービスを開発し、そうしたサービスからの収入が売り上げの半分を占めるまでに成長しているという。
また、インターネットに係るカスタマーインテリジェンスについて、購買プロセスの簡易化、購買履歴、輸送状況の追跡、製品への感想といった既存顧客に係る情報だけでなく、潜在的顧客がネットに発信している情報を分析することで、その可能性をより広く捉えることができる。
例えば、ドイツ最大のヘアケア製品会社であるSchwarzkopfでは、自社サイトのパフォーマンス(トラフィックやセールス)を向上させるため、数百万人がブログにポストしたヘアケアに係る情報の分析を行った。その結果、顧客がブランドや製品の特性よりもそれぞれのヘアケアの問題を気にかけていることに気付いた。そして、ブランドや製品のリストに代えて、髪の特徴にフォーカスして自社サイトを再構築することによって、そのトラフィックを3倍にすることに成功した。
こうした情報を入手するための課題は、自らにとって最良のデータが存在するオンラインの場所や集団を特定することにある。
なお、Schwarzkopfの事例については、パフォーマンスの向上が主にトラフィックの増加によるものであるという点に注意が必要であるように思われる。サイトを確認してもらえれば分かることであるが、髪に係る情報は豊富に提供されているが、個別製品に係る情報はあまりなく、また目立つようにも配置されていない。おそらくウェブではヘアケア市場におけるブランドの強化、新規の見込み客の呼び込みにのみ注力し、直接的な売上アップは店頭やCM等、別のポイントで行おうと考えているのであろう。
2012年9月24日月曜日
ツイッターのプロフィール画面を活用したブランディング
ツイッターはそのプロフィール画面を、フェイスブックのタイムラインのように活用できるように改良を加えた。これを受けて、 T.J. Crawfordの”How brands can utilize the Twitter header photo”では、企業が取り組むべきポイントを以下のとおりまとめている。
1.ヘッダーの画像を意味あるものに
自社のプロフィール画面に意味のあるヘッダーの画像を用いることにより、訪問者に自らそしてその体現しようとしているイメージを伝えることができる。上手い活用事例として、Oxfam AmericaというボストンのNPOが最新の活動状況を画像で確認できるようにしている。なお、代表的な消費財メーカー(GAP、Uniqlo、P&G、Shiseido、Kao)のツイッターアカウントを確認してみたが、十分に対応していると言える日本企業はなかった。
2.イメージを覆す
多くの団体にとって、このレイアウトの変更は自らに対する凝り固まった先入観を払しょくするのに活用できる。New York Cityが背景画像にニューヨークの雰囲気を表す画像を用いることで、公的機関としての威厳を保ちつつ、退屈なイメージを覆すのに成功していることが成功事例として取り上げられている。ちなみに、日本でソーシャルメディア先進自治体の代表例として取り上げられる武雄市でもそこまでは取り組みが進んでいない。また、東京にはツイッターのアカウント自体ないようだ。
3.自らのビジネスを明確に伝える
背景イメージはコミュニケーション手段として、ヘッダーは自らのビジネスをクリアに伝えるものとして使い分けることが重要である。
4.クリエイティブになる良い機会として(項目のみ)
5.個人にとっても自らをブランディングする機会となる(項目のみ)
と、ここまでブランディングという観点から、ツイッターのプロフィール画面の活用について紹介してきた訳であるが、企業間の比較をしていて思ったことは、中途半端にやっていると逆にブランド価値を損なうということ。そもそもコミュニケーションが取れていない相手と、繋がってはいるが不十分なコミュニケーションしか取れない相手、どちらがいいかということです。ただ、ブランディング、ソーシャルの持つ意味が大きくなっている昨今、ツイッターも避けては通れない一つのツールであり、プロフェッショナルにしっかりとやることが重要。
1.ヘッダーの画像を意味あるものに
自社のプロフィール画面に意味のあるヘッダーの画像を用いることにより、訪問者に自らそしてその体現しようとしているイメージを伝えることができる。上手い活用事例として、Oxfam AmericaというボストンのNPOが最新の活動状況を画像で確認できるようにしている。なお、代表的な消費財メーカー(GAP、Uniqlo、P&G、Shiseido、Kao)のツイッターアカウントを確認してみたが、十分に対応していると言える日本企業はなかった。
2.イメージを覆す
多くの団体にとって、このレイアウトの変更は自らに対する凝り固まった先入観を払しょくするのに活用できる。New York Cityが背景画像にニューヨークの雰囲気を表す画像を用いることで、公的機関としての威厳を保ちつつ、退屈なイメージを覆すのに成功していることが成功事例として取り上げられている。ちなみに、日本でソーシャルメディア先進自治体の代表例として取り上げられる武雄市でもそこまでは取り組みが進んでいない。また、東京にはツイッターのアカウント自体ないようだ。
3.自らのビジネスを明確に伝える
背景イメージはコミュニケーション手段として、ヘッダーは自らのビジネスをクリアに伝えるものとして使い分けることが重要である。
4.クリエイティブになる良い機会として(項目のみ)
5.個人にとっても自らをブランディングする機会となる(項目のみ)
と、ここまでブランディングという観点から、ツイッターのプロフィール画面の活用について紹介してきた訳であるが、企業間の比較をしていて思ったことは、中途半端にやっていると逆にブランド価値を損なうということ。そもそもコミュニケーションが取れていない相手と、繋がってはいるが不十分なコミュニケーションしか取れない相手、どちらがいいかということです。ただ、ブランディング、ソーシャルの持つ意味が大きくなっている昨今、ツイッターも避けては通れない一つのツールであり、プロフェッショナルにしっかりとやることが重要。
2012年8月17日金曜日
AIDA、AISAS、そしてSIPSへ
先般、ソーシャルメディア時代のマーケティングとして、Zuberanceによるソーシャルメディアプラットフォームに
軽く触れたが、類似した考えを消費者行動モデルとして電通モダン・コミュニケーション・ラボがまとめている(SIPS)ので、整理しておく。
ご存じのとおりこれまで消費者行動については、AIDAやAIDMAの枠組みによって認知(Cognition)段階、感情(Affect)段階、そして行動(Behavior)段階への移行として捉えられてきた。
インターネット時代への移行とともに、電通は2004年にAISASというモデルを提唱した。「Attention(気づく)⇒Interest(興味をもつ)⇒Search(情報収集する)⇒Action(購入する)⇒Share(情報共有する)」
そして、2011年、ソーシャルメディア時代に対応した消費者行動モデルとして、SIPSが電通から提唱された。「Sympathize(共感する)⇒ Identify(確認する)⇒Participate(参加する)⇒Share & Spread(共有・拡散する)」
(実際に機能する)情報の波及ルートが、マスメディアに代わって影響力を有するようになったアルファブロガーなどのInfluencerによる一方的な情報伝播から、「受信者=発信者」が共感を媒体につながる、双方向の情報伝播に移り変わってきているということである。個人的には、電通はSIPSの循環という観点によりフォーカスしているのに対して、Zuberanceは情報が共感され、共有されていくはじめの一歩、Brand Advocatesの発掘と活用にフォーカスしているように感じる。ちなみに、Brand Advocatesはブランドへの信奉心が強く、寛容であり、ビジネスへの貢献度が高く、数が多く、金銭的なインセンティブが不要という諸点において、Influencerとは異なるものである。
なお、Zuberanceの創設者兼代表であるRob Fugetta氏の著書”Brand Advocates”の第一章が無料で公開されており、こちらも参考になるであろう。その中にアメリカにおいてレクサスのある店舗がレクサスブランドの信奉者となった顧客からの販売協力を無視してしまうという失敗例が紹介されているが、レクサスのような高所得層をターゲットとしている商品に関して、そうした階層内での口コミ(WOM)の影響力をレクサス販売店が知らないわけはなく、何か誤解があるような気がする。
ご存じのとおりこれまで消費者行動については、AIDAやAIDMAの枠組みによって認知(Cognition)段階、感情(Affect)段階、そして行動(Behavior)段階への移行として捉えられてきた。
インターネット時代への移行とともに、電通は2004年にAISASというモデルを提唱した。「Attention(気づく)⇒Interest(興味をもつ)⇒Search(情報収集する)⇒Action(購入する)⇒Share(情報共有する)」
そして、2011年、ソーシャルメディア時代に対応した消費者行動モデルとして、SIPSが電通から提唱された。「Sympathize(共感する)⇒ Identify(確認する)⇒Participate(参加する)⇒Share & Spread(共有・拡散する)」
(実際に機能する)情報の波及ルートが、マスメディアに代わって影響力を有するようになったアルファブロガーなどのInfluencerによる一方的な情報伝播から、「受信者=発信者」が共感を媒体につながる、双方向の情報伝播に移り変わってきているということである。個人的には、電通はSIPSの循環という観点によりフォーカスしているのに対して、Zuberanceは情報が共感され、共有されていくはじめの一歩、Brand Advocatesの発掘と活用にフォーカスしているように感じる。ちなみに、Brand Advocatesはブランドへの信奉心が強く、寛容であり、ビジネスへの貢献度が高く、数が多く、金銭的なインセンティブが不要という諸点において、Influencerとは異なるものである。
なお、Zuberanceの創設者兼代表であるRob Fugetta氏の著書”Brand Advocates”の第一章が無料で公開されており、こちらも参考になるであろう。その中にアメリカにおいてレクサスのある店舗がレクサスブランドの信奉者となった顧客からの販売協力を無視してしまうという失敗例が紹介されているが、レクサスのような高所得層をターゲットとしている商品に関して、そうした階層内での口コミ(WOM)の影響力をレクサス販売店が知らないわけはなく、何か誤解があるような気がする。
2012年8月12日日曜日
今更ですが、新しいマーケティング。 Peer Influence-Based, Community-Oriented Marketing
HBR Blog Networkに掲載された "Marketing is Dead” は、従前のマーケティング手法は顧客の関心を喚起しない、もたらされる成果が明確でない、ソーシャルメディアが主要なコミュニケーションツールとなる環境下においてはそもそも機能しないとして、新たなマーケティング手法の導入を提案している。
具体的な取り組みは以下のとおり。
・コミュニティマーケティング(信頼度が最も高い(と顧客が感じる)情報を生み出す口コミを促すためのマーケティング)の再生
・インフルエンサー(他の顧客の消費行動に影響を与え、単に消費する以上の価値をもたらす顧客)の発見
具体的な取り組みは以下のとおり。
・コミュニティマーケティング(信頼度が最も高い(と顧客が感じる)情報を生み出す口コミを促すためのマーケティング)の再生
・インフルエンサー(他の顧客の消費行動に影響を与え、単に消費する以上の価値をもたらす顧客)の発見
マイクロソフトのMVP (Most Valuable Professional)
・社会的資本(評判、ネットワーク、新しい情報へのアクセスなど)の形成支援による、インフルエンサーへのインセンティブの付与
・社会的資本(評判、ネットワーク、新しい情報へのアクセスなど)の形成支援による、インフルエンサーへのインセンティブの付与
National Instrumentsによる中間管理職支援
・顧客との共同によるソリューションの企画
・顧客との共同によるソリューションの企画
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