2012年10月18日木曜日

神経科学の知見を活用した組織改革

HBR Blog Networkの”This is Your Brain on Organizational Change” by Walter McFarlandによれば、激化する競争、グローバリゼーション、技術革新、金融不安、政治的不安定、そして変化する労働力構成などがよりスピーディに、またこれまでとは違う形での組織変化を求めているのに対し、学問的にも、実践的にも十分な発展が見られていない。


いくつもの課題のうち、重要なものの一つとして、従業員をうまく関与させられていないということが指摘されている。組織改革より新規の組織設立のほうが楽だと言われるくらいに。具体的には、「人間の持つ変化への抵抗」が大きな障害となっているわけであるが、どのようにすれば、従業員の支援と創造力(組織改革の際に最も重要な属性)を効果的に引き出すことができるのであろうか。


神経科学、特に脳に係る研究(社会、認知、情動)が、現実に応用可能な知見を提供している。2012NeuroLeadership Summitにおいて、神経科学と組織改革の繋がりについて以下のような点が議論されている。

・現在進行形
変化は常に従業員を恐れさせ、また驚かせる。

・火事場の演出の必要性
従業員を駆り立てるために、明示的、黙示的に恐れが利用されている。

・トップダウンの組織改革
ごく少数の人間によって改革が主導され、コミュニケーション不足やその失敗が見られる。

例えば、「火事場の演出の必要性」について、神経科学の見地からは、従業員をプラスの方向に導くというよりは不快にさせるものであるということが分かっている。また、「トップダウンの組織改革」については、恐怖を引き起こすに過ぎない。


職場における社会的側面をより良くマネジメントしていくには、ステータス、確実性、自律性、関係性、公平性といったニーズが満たされる必要がある(SCARF model)。こういった点を考慮し、以下のように変化をこれまでと違った観点から捉える必要がある。まずは、人間というものをモノではなく、競争力の源泉として捉える。つまり、組織改革を常在する危機としてではなく、組織をより良くマネジメントするために必要な準備をするためのものと捉えるということになる。


SCARF model(スカーフモデル)



人間の脳の統制原理は危機の最小化と報酬の最大化に集約され、リーダーやマネジャーが影響力を発揮するにはこの点を念頭に置かなければならない。具体的には以下の5つの要素を考慮する必要がある。

Status(ステータス) 周囲の人間との関係において自分がどこに位置しているか、どれだけ重要であるか。

Certainty(確実性) どれだけ未来を予測できるか。人間の脳は常に安定性を求め、あいまいな物事を予測しようと働いている。

Autonomy(自律性) 人間は自ら統制できない、選択できない状況に対してストレスを感じる。

Relatedness(関係性) 敵よりも味方といるときのほうが安全と感じること。知らない人間の中に投げ込まれたときに、たとえば会社においてバーチャルなチーム、多様な出自を持つ人間によって構成されるチームで活動する際に、人間はストレスを感じる。

Fairness(公平性) 人々の間で等価交換が行われているという認識。評価の透明性、客観性が重要となる。

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