Bain & Companyの”Asia discovers its M&A potential”by Satish Shankarによれば、力強い経済成長、好調な企業収益、そして政府の規制緩和を受けて、アジア太平洋におけるM&A市場が回復しており、全世界の24%の案件を占めるまでになっている。クロスボーダー案件の急激な増加が顕著であるが、リターンの大きさに付随するリスクを大きさもあるとし、これまでの事例からM&A成功のための4つの特性を抽出し、紹介している。
1.企業の成長戦略に適合したM&A戦略
シンガポールを本拠地とするOlam Internationalは、世界的な農産物、食料品のサプライヤーとしての地位を確立するため、企業買収を進めてきた。その特徴として、既存ビジネスにおける主導的地位の確保、隣接するビジネスへの進出、新規市場における参入障壁の突破、新たな能力の獲得、価格支配力の強化等が挙げられる。また、M&Aの頻度、規模、タイミング、支配権について、ガイドラインも定めている。例えば、新聞の一面を飾るような大規模のM&Aではなく、一つの案件を自らの時価総額の10%以内に限定する、一年間に達成する案件も自らの時価総額の15%に抑えている(「一連の真珠」アプローチ)。
同様の事例として、インドの家庭用品、介護用品メーカーGodrej Consumer Productsは、M&Aに乗り出すまでに2年間の準備期間をおき、M&Aチームを設け、詳細な統合マニュアル、M&A候補抽出のためのスクリーニングプロセスなどの戦略を策定している。具体的には、自社の3つのコアカテゴリ、新興国市場、当該市場の有力企業といった案件に限定するなどしている。
2.統制され、また自社の能力を踏まえた、反復可能なM&Aモデル
例えばOlam Internationalでは、6名のコアメンバーからなるM&Aチームが、各ビジネスユニットによる企業買収の全工程を、ガイドラインや企業戦略に沿って支援している。
3.価値創出、プロセス統制、人的課題の迅速な解決に集中した、企業統合
東南アジアのある小売企業は、それまで赤字企業を買収し、統合により即座に価値を生み出そうとしていたが、新経営陣がほとんどの儲けの出ない業務を切り捨て、シンガポールとマレーシアの2つの中核市場に集中するようになった。地域を絞り込んだ統合により、サプライヤーに対する購買力が増し、大幅なコスト削減に成功した。また、具体的取組の紹介はないが、人事関係の課題を特定し、解決することで、統合から三年後も成長を続けているとしている。
4.粘り強さ(経験の蓄積)
ベインによる調査の結果、M&Aは頻繁に行っている会社ほど、M&Aから大きなリターンを挙げている(経験曲線)。具体的には、頻繁にM&Aを行っている会社は、たまにM&Aを行う会社に比べて1.4倍、M&Aに積極的でない会社の2倍以上のリターンを挙げている。
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