2013年4月3日水曜日

大企業におけるイノベーションの実現方法(P&Gとサムスンを例に)

HBR Blog Networkの”Getting Crazy Ideas Off the Ground” by Alessandro Di Fioreの抄訳。


インサイトが生まれてから、開発へのゴーサインが出るようなコンセプトにまで仕上がるまでの期間をどのように管理するかは、不連続なイノベーションを生み出すのに重要である。こうした既存の体制(能力、ビジネスモデル)に適合しないアイデアはビジネスにするのが難しく、リスクを抱えている。 

ほとんどの場合、組織から何か指示などがない中で、個人が飛び抜けたアイデアを生み出し、率先して進めていくのである。ただ、残念なことに、強力な個性を放つ個人とアイデアは政治的に脆弱であることが多い。つまり、周囲にいるほとんどの人々は利害関係を持っておらず、資金調達、具体化を達成する方法については明確なプロセスが存在していない。そうした環境が整っていない企業では、価値を創造し得るインサイトが放置されてしまっている。 

不連続なイノベーションは脆弱なだけでなく、組織的な保護や方向づけを得ることもない。こうした課題に上手く取り組んでいる企業として、P&Gとサムスンが挙げられる。 

P&Gは一般的な組織内には拠り所のないアイデアにシードマネーを提供する"Corporate Innovation Fund"(CIF)を設立している。CIFは組織内には拠り所のないアイデアから優れたものを選抜し、実現に適切なチームを、組織内のユニットを跨いで集め、割り当てるという極めて重要な役割を果たしている。CIFによる投資は一般的な予算サイクルとは別に設定されており、リスクの高いアイデアでも簡単に正当化可能なメインストリームのプロジェクトと競争せずに資金を得ることができる。 

サムスンも同様のアプローチを採用しており、ソウルから南に33km離れたスウォン(サムスンの主要な製造拠点)に、不連続なイノベーションのアイデアを受け付ける”Value innovation Program (VIP) Center”を設立している。VIPセンターは24時間オープン、20のプロジェクトルーム、38室のベッドルーム、ジム、お風呂、卓球台を備えている。 誰でもアイデアを提案することができ、VIPは毎年90件くらいのプロジェクトが現在進行形で取り組まれている。選抜されたアイデアはVIPの組織的な保護と初期段階における開発環境を与えられる。 P&GのCITと同様に、VIPでは、戦略的イノベーションと顧客調査のツールと​​プロセスの専門家によるサポートを提供するとともに、エンジニア、デザイナー、マーケティング担当者で構成されるイノベーションチームの立ち上げに重要な役割を果たしている。 このようにして、VIPプロジェクトは詳細なコンセプト(価値提案、設計の青写真、技術とコストのスペックを含む。)へと昇華していくのである。その後、プロジェクトは更なる発展のため、既存の製品開発プロセスに引き継がれていく。サムスンを一躍テレビ製造産業のリーダーに押し上げたボルドーTVなどもVIPセンターから生まれたものである。

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