2013年1月13日日曜日

オフィスオペレーションの背後にあるロジック

The Org: The Underlying Logic of the Office”の著書であるTim Sullivanへのインタビューの抄訳 (HBR Blog Network)。

オフィスのオペレーションについては既に多くの悲観的な見方が示されているところであるが、組織運営には各種要素間におけるトレードオフが避けられず、環境及び目的に合わせて選択を行わざるを得ない。

Theory of necessary employee disillusionment
ある職務に対してモチベーションが高く、貢献的で有能な従業員を雇うことと、その従業員の行動をフォロー、モニターすることは逆のベクトルであるが、組織として成り立つためには両者のバランスよく行う必要がある。
(当たり前の組織マネジメント(information flow, monitoring, measurement, resource allocation)がもたらす成果について、インドの織物企業などを事例として説明。)

リーダーのいないネットワーク型組織
例えばウィキペディアにもマネジャーはおり、ボランティアだけでマネジメントすることはできない。また、米軍がネットワーク型組織の参考としたアルカイダでさえマネジメントを要素として組み込んでいた(バクダッドのリーダーからカイロのオフィスに宛てた、同胞の服務環境に係る手紙など)。

今後の組織
情報通信に係る技術革新により可能となった自宅勤務、テレビ会議などが、独立した請負人(Independent contractor)のような働き方を可能にしているのは事実であるが、そうした枠組みが機能しない領域もあり、組織の重要性に変わりはない。

パーテイションで区切られたオフィススペース
従業員を監獄に閉じ込めるためではなく、解放するために考え出されたもの。1950年代上層部は個室を与えられ、プライバシーを享受していたが、下位の従業員はそうではなかった。
Robert Propstなどは、こうした状況を改善するため、また20世紀に起こるであろう情報流通量の急増を見越して、1964年大きなテーブルを用いた移動が容易なオフィススペースを提案したが (Action Office)、コスト面、スペースの効率性からクライアントの支持を得ることができず、1968年に現在のようなパーテイションで区切られたオフィススペースが導入された。

2013年1月10日木曜日

イノベーションに係るトヨタとYouTubeの共通点

HBR Blog Networkの“Innovating the Toyota, and YouTube, Way” by Michael Schrageの抄訳。


人材、プロセス、技術といった観点からは、トヨタとYouTubeは全く異なる企業であるが、両社にはサプライヤーのイノベーション能力の向上に投資をしているという共通点がある。

例えば、USA TODAYによれば、Googleは1万~30万の購読者を持つ25人のアーティストに自社のデジタルスタジオ (the Space @ Los Angeles)を貸し出し、また設備の使用方法の指導も行い、コンテンツの作成を支援している。

一方、リーン生産方式の元となったトヨタ生産方式では、単に品質を高め、ジャストインタイムで在庫管理を行うのみでなく、サプライヤーをより革新的、創造的にする支援も含まれていた。具体的には、教育と訓練により、サプライヤーがリーン生産方式、その実験技術、知見を得られるよう支援していた。

両社とも金銭的なインセンティブではなく、人的資本の開発という側面から取り組んでいる点で共通している。

もちろんこうしたイノベーションへの支援は、競合関係にある(若しくはそうなり得る)サプライヤーに対して行われるべきものではない。目標は、より良いイノベーションエコシステムを築くことにある。

2013年1月7日月曜日

プロシューマーへのフォーカス

HBR Blog Networkの“To Spur Growth, Target Profitable "Prosumers"” by Eddie Yoonの抄訳。

一般的な消費者とプロフェッショナルの間に位置するプロシューマー(プロ仕様製品の消費者)は、カテゴリーとしては小さいものの、利益という観点からは大きな意味を持っている。

プロシューマーは、価格と提供価値という観点から満たされていない需要を発見するのに役立つ。具体的には、①より大きな支払意思 (willingness to pay)を持つ消費者の特定、②ふさわしい専門家からの承認による製品の信用の向上、最小費用で製品の価値を増加させる方法の発見により、より高い価格設定が可能となる。プロ仕様のスポーツ用ウェアなどを扱うUnderArmour、在宅で病院同様の看護サービスを1/10の価格で提供するAlmost Family、ロットの大きい商品を卸売価格で提供するCostcoやSam’s Club、医師のように血糖を測定、管理できる器具を提供するRocheなどがこれに当てはまる。

プロシューマーにフォーカスすることは以下の状況下での需要を顕在化させるのに役立つ。
(1) プロ向け製品が一般消費者向けより圧倒的に優れている場合
(2) プロによる提供やお墨付きがネームバリューを持つ場合
(3) DIY (do-it-yourself)に潜在的需要がある場合

一般的な消費者や大きなB2Bビジネスにフォーカスしていると、売り上げ規模としては小さなプロシューマーは見逃されがちとなるが、利益、イノベーションという観点からは重要なセグメントである。

2013年1月5日土曜日

2013年におけるテレコム業界の展望

2013 Telecommunications Industry Perspective”(booz & co.)の抄訳。

スマートフォンやタブレット端末の普及、モバイルインターネット、デジタル化技術(クラウドコンピューティングなど)により、データ通信の量は急激に増加している。それに対応するため、テレコム各社はワイアレスブロードバンドなどに多大な投資を行っているが、収益化は上手くいっていない。

こうした状況下でビジネスを拡大していくには、コアとなる事業の再定義、隣接分野への拡大、企業としての規模に応じた一貫性の保持といったリストラクチャリングが必要となる。そして、その実現のためには、以下の4つのビジネスモデル(相互に排他的ではない。)がある。

1.安定したネットワークの提供 (The network guarantor)
ネットワークインフラと関連サービスの提供、高い通信品質、信頼性、スムーズに統合されたプラットフォームとアプリケーションの保証を、費用対効果の高い方法で実現することに集中する。従来のビジネスモデルとあまり変わらないように見えるかもしれないが、通信量の激増に伴って重要性が増しつつあり、いくつかのネットワークやサービスを選択肢として顧客に提供しているテレコム企業もある。

2.顧客のビジネス支援 (The business enabler)
信頼できるバーチャルネットワーキング、クラウドサービスなどを通じて、ビジネス関係の顧客がデジタル化の利益を得ることを支援する。例えば、ビジネス関係の顧客に対して、テレコム企業が自社の課金、徴収システムを利用可能なようにすること、オンラインリテールの拡大支援などである。

3.際立った顧客体験の創造 (The experience creator)
電子財布(おサイフケータイ)、パーソナライズされた情報に基づくアプリ、音楽、ビデオクリップ、ゲームへのアクセスといった、アプリケーションとコンテンツを、最高のユーザー体験に統合させたかたちで、顧客に提供する。ただ、顧客に関する深い洞察、顧客のマネジメント、イノベーション、既存のネット企業との競争などもあり、このモデルで成功しているテレコム企業はほとんどない。

4.グローバル展開 (The global multi-marketer)
ホームとしている市場やセグメントを越えて、他国の市場や新たなセグメントに乗り出す。

そして、これらのリストラクチャリングを実現するには、以下の5つの能力を望ましいバランスで備えていなければならない。 
1.卓越した顧客分析能力 (Enhanced customer analytics)
2.革新的な製品・サービスの創造と提供による顧客体験のマネジメント (Customer experience management)
3.デジタル化による顧客企業のビジネスプロセスの改革 (Digital enablement)
4.隣接するセクターや新市場への進出に際しての戦略的提携 (Strategic partner management)
5.保有資産の把握とマネジメントによるコスト構造の適正化と投資資金の確保 (Yield management)