2012年9月10日月曜日

問題解決の前に正しい問題設定を

アインシュタイン曰く、地球を救うために1時間与えられたら、私は59分を問題設定に充て、残りの1分でそれを解く。
“If I were given one hour to save the planet, I would spend 59 minutes defining the problem and one minute resolving it.”


Dwayne Spradlinは、”Are You Solving the Right Problem?”において、問題の解き方や回答よりも、どう問題設定するかが重要であることを述べ、彼が用いている問題設定のプロセス(challenge-driven innovation)を披露している。なお、記事の中では、発展途上国においてきれいな水へのアクセスを確保することにより、経済発展を支援するNPO、 ”EnterpriseWorks/VITA”(VITA: Volunteers In Technical Assistance)の例を用いて具体的な方法を示している。


問題設定のプロセス

ステップ1:ソリューションに対するニーズを確立する

・「簡潔に、根本的なニーズは何か。」
問題の核心を突く。

・「質的・量的に求められている結果は何か。」
顧客、受益者の視点を理解する。

・「誰がなぜ利益を得るか。」
全ての潜在的な顧客、受益者を特定する。


ステップ2:ニーズの正当性を明らかにする

・「その行為は組織の戦略に沿っているか。 」
そのニーズを満たすことがその組織の戦略的目標の達成に合致しているか。

・「会社にとっての利益とは何であり、またそれをどのようにして測定するか。 」

・「どのようにしてソリューションが実行可能であることを確かなものとするのか。」
どんな資源がどれだけ必要であるかを組織内の高いレベルで議論を始める。特に認識が大きく異なる場合は概算見積りを共有しておく必要がある。


ステップ3:問題を文脈の中に落とし込む

・「どんな方法を試してきたか。」
経験から学ぶことにより、改善を加えたり、失敗を回避したりする。

・「競合相手等、他の人たちはどのような方法を試してきたか。」

・「ソリューションを実行に移す上での内的・外的制約条件はどうなっているか。 」
組織内での合意形成と資源調達、法律や規制などのクリアは大丈夫か。


ステップ4:問題と満たすべき条件を詳細に書き表す
内外の合意や協力を得るという観点からも、解決すべき課題をしっかりまとめておくことは重要である。 

・「書き起こされた問題(problem statement)の中には複数の問題が含まれていないか。 」
複雑な問題は各要素に分割したほうが対処しやすい。

・「ソリューションが満たさなければならない要求は何か。 」
絶対的に満たすべき要求と満たしたほうがいい要求を分別する。

・「どのような専門家や組織(「解決策提案者」)を問題解決に引き込んでいくべきか。 」

・「問題にはどんな情報を含め、どんな言葉を使うか。」
より多くの協力を得るには、具体的、しかし不必要にテクニカルではない程度に問題を記述する。業界特有の専門用語や前提知識を避ける。過去のソリューションを簡単に説明する。

・「解決策提案者は何をアウトプットする必要があるか。 」
仮説的なアプローチを提示してもらうだけで足りるか。本格的な試作品も提供してもらう必要があるか。

・「解決策提案者はどんなインセンティブを必要としているか。 」

・「ソリューションはどのように評価され、また成功はどのようにして測定されるのか。」

2012年9月8日土曜日

ベンチャーの資金調達のためのアドバイス

Michael Fertikは、”Practical Advice for Raising Early Stage Venture Capital”において、アーリーステージでVCから資金調達するためのアドバイスを披露している。


まず、そもそも以下の理由から可能な限り自己資金で事業を進めていったほうがいい。ただし、対象としているビジネスの動きの速かったり、利益が大きかったり、巨大市場で会ったりする場合を除く。
1)会社の支配権を維持する
2)それによって生のビジネス(の厳しさ)を経験し、学習することができる。
3)小さい代償で事業から撤退することができる。
4)外部資本なしで会社をつくり上げることができれば、それはより自立した事業であるといえる。


という前提を踏まえた上で、以下8つのアドバイスの紹介となる。
1)資金調達のアプローチを大規模ファンドから始めてはいけない。
Sequoia capitalやKPCBのようなベンチャーファンド業界のトップファンドの影響力は大きく、他のところもその判断に追随してしまう。

2)パートナー以外からの突っ込んだ質問には対応してはいけない。
アソシエイトやアナリストは渉外として情報収集をしているに過ぎず、何の決定権もない。

3)交渉破断後のフィードバックは無視してよい。
投資を見送られた後のフィードバックは割り引いて受け止めたほうがいい。なぜなら彼らはThe Fundedなどで悪く言われるのを避けたいだけだから。

4)事前にプレゼン用資料を送ってはいけない。
どのVCも資料を送るよう要求してくるが、丁重にお断りしたほうがいい。この点については、両者の間に十分な信頼関係が築かれるまでは妥協してはいけない。彼らはその資料から得られた情報を二次活用してしまうからだ。

5)VCとアポが取れたくらいで興奮してはいけない。

6)VCから要求があっても、第三者と会ってはいけない。
VCは手持ちの企業や人材と一緒になることを勧めたりするが、その提案は断ったほうがいい。なぜなら、もっと情報を引き出そうとしている、当該企業の評価についてその第三者の意見を参考にしたいと思っている、そのアントレプレナーの能力を試そうとしていることなどが考えられるからである。

7)トップVCがシードステージでスーパーエンジェルに対抗するためにつくったファンドやインキュベーターのオファーを受ける場合は注意する必要がある。
そのVCだけで十分なくらいの支援を受けられないのであれば、次のラウンド(資金調達)で、何か問題があってそのVCが支援をしないのではないかとの疑念を持ち、潜在的な投資家にとって魅力的な案件でなくなってしまう。

8)いくつか連絡の取れる、友好的なファンドを確保し、定期的に事業状況を説明しておく。
事業についてアドバイスをもらったり、いざという時に支援をしてもらうためである。

2012年9月6日木曜日

米国経済が抱える問題(所得格差の拡大と雇用の流出)

David Leonhardtは、一連のレポートにおいて、米国経済が抱える問題について色々なテーマで解説している。今回は“A Slowdown in Growth, an Increase in Income Inequality”と”Globalization and the Income Slowdown”から、所得格差の拡大と雇用の流出について。


ここ十年ほどアメリカの所得は停滞しているが、主に経済成長の減速と所得格差の拡大によるものである。経済成長の減速については、“米国経済停滞の理由(人口動態の変化)”で取り上げたところであるが、所得格差については以下のグラフで一目瞭然となる。所得階層が上位にあるほど所得上昇率が高いことが分かる。



さらに所得再分配後でも同じ傾向にあることがCBOの”Trends in the Distribution of Household Income Between 1979 and 2007”からも分かる。



では、その原因とは何であるか、いくつか示されている。技術革新、低質な教育による人的資源の劣化、低所得層に大きく響いているヘルスケア関係費用の上昇などが識者の意見として挙げられている。


最も直接的なものとして、グローバリゼーションによる競争の激化、サプライチェーンの世界的拡がりによる産業の海外移転があり、その結果、アメリカ国内に残るのは地域に根差し、外に持ち出せない公共サービス、教育、医療などとなっている。経済学者のMichael Spenceによれば、雇用創出の97%以上はこうした移出できない分野によるものであるとのこと。また、これらの産業の労働者の所得水準は高くない。日本にも共通する課題である。