2012年9月6日木曜日

米国経済が抱える問題(所得格差の拡大と雇用の流出)

David Leonhardtは、一連のレポートにおいて、米国経済が抱える問題について色々なテーマで解説している。今回は“A Slowdown in Growth, an Increase in Income Inequality”と”Globalization and the Income Slowdown”から、所得格差の拡大と雇用の流出について。


ここ十年ほどアメリカの所得は停滞しているが、主に経済成長の減速と所得格差の拡大によるものである。経済成長の減速については、“米国経済停滞の理由(人口動態の変化)”で取り上げたところであるが、所得格差については以下のグラフで一目瞭然となる。所得階層が上位にあるほど所得上昇率が高いことが分かる。



さらに所得再分配後でも同じ傾向にあることがCBOの”Trends in the Distribution of Household Income Between 1979 and 2007”からも分かる。



では、その原因とは何であるか、いくつか示されている。技術革新、低質な教育による人的資源の劣化、低所得層に大きく響いているヘルスケア関係費用の上昇などが識者の意見として挙げられている。


最も直接的なものとして、グローバリゼーションによる競争の激化、サプライチェーンの世界的拡がりによる産業の海外移転があり、その結果、アメリカ国内に残るのは地域に根差し、外に持ち出せない公共サービス、教育、医療などとなっている。経済学者のMichael Spenceによれば、雇用創出の97%以上はこうした移出できない分野によるものであるとのこと。また、これらの産業の労働者の所得水準は高くない。日本にも共通する課題である。


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