まず、今後のアジア経済について、2030年までにその実質GDPは67兆ドルと現在の倍以上となり、ヨーロッパとアメリカのGDP合計額を抜くと予測されている。そうした経済成長の要因として、(1)インフラ、住宅、産業そして人的資源への大きな投資(2030年には22兆ドルと予想。)、(2)アジア経済の成熟・統合(域内貿易額は2000年から3倍にも増加している。)、(3)世帯所得の上昇に伴う消費財への高い需要(2030年には45兆ドルと予想。)、が挙げられている。
文化、経済、人口動態、商慣習の異なるアジア全体に共通した市場攻略方法は存在しない。また、同じ国の中でも地方によって異なる。だが、成功したオーストラリア企業の共通点として、高度な技術・サービスセクター、地政学的な長所、天然資源に価値を付加する能力といった自らの長所をアジアの成長と上手くマッチングすることで、その成長を取り込んでいることが分かる(下図参照)。
実際にそれらの企業がどのようにして成功したかについて、各ポイント(顧客に提供できる価値の定義づけ、成長戦略、オペレーションモデル)に対応する、アジアの現実(地域間の相違と長所、関係や信頼の重要性、変化に富んだ市場)と、企業の対応策(現地化、関係構築、適応的モデルの構築)が以下のとおりまとめられている。
顧客に提供できる価値の定義づけ
アジアの消費者の趣向は、所得階層や人口動態とともに国や文化で異なる。BtoBにおいても、その経済発展段階、成長のスピード、商慣習や規制で異なる。だが、一般的に評判や(アジア地域における当該企業の)規模が重要視される。つまり、ネットワークや規模の経済が複数のアジア市場において有効であるということであり、カスタマイズと企業規模のバランスが重要となる。
成長戦略
アジアにも競争力のある地元企業があり、どの市場にどういった強みを生かして切り込んでいくか検討、優先順位づけが必要である。また、クライアントや顧客と関係を構築し、信頼を得るには、ちょっとした困難に直面したくらいでは退出しないことなどを示す必要がある。
オペレーションモデル
アジアの多様性、変化の激しさに対応していくには、現地化(地域の文化、社会、商慣習に係る従業員教育、現地従業員の職責の明確化)、適応性(目的の共有、チャレンジの促進と失敗への寛容、学習する組織)が重要となる。
と、当然のことが書いてあるわけであり、アジア進出済みの多国籍企業を除いた、欧米企業のアジア進出の進展具合の程が読み取れるわけであるが、実務的なレベルでこれらを実行するにはかなりの労力が必要であり、これからアジアに進出しようとする日本企業も考えておくべき点が含まれているであろう。
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