2012年9月27日木曜日

小売市場を中心としたインドの経済改革

HBR Blog Networkの”Open India: considerations for Retailers” by Vijay Govindarajan, Javed Matin, and Christian Sarkarによれば、インドのマンモハン・シン首相による「強い経済こそが善政である(Good economics is good politics)」との考えの下、1991年7月の市場開放以来、最も重要な経済改革を進め出した。対象としては、小売、航空機、放送そして発電産業が含まれている。


小売産業における外資規制緩和
ウォールマート、イケア、テスコなど、複数のブランドを取り扱う小売業者(Multi Brand Retail: MBR)には出資比率51%までの直接投資が認められることとなる。しかし、人口100万以上の都市でしか営業できない、最低投資額が1億USドル以上、直接投資額の少なくとも50%以上は三年以内にバックエンド・インフラに行うことといった制約も付いている。


この更なる経済自由化への動きを踏まえ、ビジネスとしてどのように対応すべきか
上記開放政策の発表後、弱者切り捨てではないか等の反対が出てきている。インド進出戦略の立案に当たっては以下の点を検討しておく必要がある。

市場の選択
・どの州で小売りを展開していくか。(インドではビジネスに係る権限は州政府が有している。)
・どのようなインフラ需要があり、何を自ら建設する必要があるか。
・競争相手はどのように計画しているか。(ウォールマートは2年以内に進出することを計画中との記事がある。)
・どの地元パートナーと提携すべきか。
・どのようにして信頼を勝ち得るか。

包摂
・人種、宗教、性別などの違いを包摂していけるか。
・家族経営の雑貨商(kirana)にどのような影響が生じるか。
・kiranaを自らの流通ルートに組み込んでいく方策はあるか。
・地域コミュニティはどうか。
・進出にあたって他の新興国市場から学んでおくべきことはないか。

現状破壊
・進出により、最も影響を受けるのは誰か。
・チェンジマネジメントに何を利用するか。
・地元の政治情勢をどのようにフォローし、理解し、そして関係を形成していくか。
・サプライヤーや地元パートナーのビジネス、消費者の生活をどのようにして改善していけるか。

ビジネスモデルの革新
・利便性を保ちつつ購買における規模の経済と効率的なサプライチェーンを活かして低価格商品を消費者に届けるため、どのようにして小規模店舗を使ったビジネスモデルを発展させていくか。
・地元の顧客は何に価値を見出すのか。
・必要とされる製品やサービスへのアクセスをどのように顧客に提供するか。
・搾取せずに責任をもって販売するにはどうすればいいか。
・自分たちのビジネスモデルに対してどのように信頼を構築していくか。

ブランドの構築・維持
・どのようにして消費者教育をしていくか。
・サプライチェーンを管理するために何ができるか。
・(米国企業を念頭において)どのようにしてパートナー企業やサプライヤーと共に海外腐敗行為防止法、児童労働法を順守するか。

文化的認識
・どのようにして植民地的発想を回避するか。
・地元指導者との協働に際して、どのような影響を行使できるか。
・自らの価値観を守りつつ、どのようにして地域の伝統を尊重していけるか。


なお、ウォールストリートジャーナルとヘリテージ財団が公表している経済自由度指標(Index of Economic Freedom)において、インドは179か国中123番目(ほとんど自由でない(Mostly Unfree))に位置付けられている(2012年時点)。

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