2012年9月5日水曜日

データを成果につなげるために必要なこと

Lara LeeとDaniel Sobolの”What Data Can’t Tell You About Customers”によれば、人間行動は微妙で複雑なものであり、データだけではその一部しかとらえることはできない。


データから新しい動きが発見できたりするが、何をすればいいかを指し示すことはできない。人々が何をするかではなく、なぜそれをするのかを理解することがイノベーションには欠かせない。例として、ブラジルで各家庭にテレビが普及した背景に、経済成長だけではなく、治安の悪い貧民街(favela)に住む親たちが、子供ができる限りストリートに出歩かないよう、家の娯楽を充実させようとしたこともあることが、突っ込んだフィールド調査で分かったことが挙げられている。


また、データによって裏付けられた消費者の環境志向の高まりの背景を、詳細なインタビュー等で掘り下げ、持続可能性と結びつけることで成功した、クリーニング用品のCloroxの取り組み(green works)を紹介している。


最後に、人の薬の処方状況を追跡し、補充が十分でない場合にお知らせするという顧客サービスが、逆に顧客に対して監視、介入されているという印象を与え、顧客との信頼関係の構築に寄与しなかった例を、データだけでは上手くいかない事例として挙げている。


ただ、別にデータ自体が悪いというわけではなく、データだけに頼り切らず、その背後または先にあるものを見ないとイノベーションは生み出せないということであると理解しておくこととする。

2012年9月4日火曜日

米国経済が抱える問題(人口動態の変化)

David Leonhardtは、一連のレポートにおいて、米国経済が抱える問題について解説している。今回は“Is Simple Demography Behind Weak Economy?”から、人口動態の変化について。


アメリカの年間経済成長率(10年平均)は上記グラフが示すように、1960年代、70年代は平均4%、1980年代から2000年代にかけては平均3%であった経済成長率がここに来て2%を割り込むところまで減少している。

Leonhardtは、構造的な原因の一つとして、アメリカの生産年齢人口比率は今後増加しないことが挙げられている。生産年齢人口とは教育を終える年齢に達しているが、退職するほど年老いてもいない、社会の生産活動に寄与する年齢層の人口を意味する。需要もそうだが、特に供給力という観点から、経済に大きな意味を持つ。アメリカでは、1967年から1997年にかけて25~64歳人口が全体人口に占める割合は44%から52%まで増加したが、2007年以降、53%程度で停滞している。*

また、労働力に占める女性比率は、1948年から1997年にかけて32%から60%まで増加したが、現在の57%まで低下し、これ以上の上昇は見込めない。つまり、生産年齢人口のうち、実際に生産に寄与する人間の数も増加しないということである。

Leonhardtの言うとおり、確かに生産年齢人口比率は増加しないかもしれないが、2012年版国連世界人口推計が示すように生産年齢人口自体は増加する見込みであることに注意が必要である。既に生産年齢人口自体が減少し、今後も減少し続ける日本に比べれば、良い状況であると言える。

* 一般的に生産年齢人口は15歳以上65歳未満の人口をいうが、ほとんどの人間が高校まで進学する現在、適切な設定かは議論がある。

2012年9月2日日曜日

アンケート調査は短く

Michael Schrageは、”Learn More By Asking Fewer Questions”において、各種アンケート調査の回答率を高めるための最も簡単で強力な方法として、質問を絞り込むことを掲げている(この人は5個と言っている。)。


「そんな誰でもわかりそうなことを」となってしまうところであるが、他にもプラスの面がある。質問が多いと回答率が低くなることはもちろんであるが、実は後半の質問への回答の精度が低下して、その部分があまり有用でなくなってしまうという問題がある。リサーチ料は、概ね質問数とサンプル数で決定されることを考えれば、コスト削減の観点からもあまり成果の望めない質問はカットしたほうが望ましいであろう。


ちなみに、この程度のことは個人向けに無料ネット調査を提供しているSurvey Monkeyが英語日本語で既にまとめていた。。。というわけで、”Learn More By Asking Fewer Questions”を読む時間があったら、”How Much Time are Respondents Willing to Spend on Your Survey?”を読むことをお勧めしておく。