2012年12月22日土曜日

動的価格設定 (Dynamic Pricing)

Why Online Retailers’ New Pricing Strategy Will Backfire” by Rafi Mohammed (HBR Blog Network) の抄訳。


アマゾンやベストバイといったオンライン小売業者の間では、動的価格設定(dynamic pricing:売り手が、同じような顧客に対して同じ商品・サービスを提供する際、価格を迅速に上下させ、異なる価格を提示すること。) が盛んになり、15~25%くらいの価格変動が一般的になっている。

そこには一定の理由があるが、長期的利益の喪失、消費者行動だけでなく、ブランドに与える影響について、理解しておく必要がある。

2007年、アップルは手痛い経験をした。アイフォン発売からたった69日で価格を$599から$399に引き下げたのだが、既に購入していた顧客はの激怒を買ってしまったのだ。アップルは謝罪するとともに、自社製品に使用できる$100のクレジットを提供して、事態を収拾した。一方、ネットフリックスは2011年、大幅な値上げを行い消費者の怒りを買ったが、何も対応しなかったところ、三か月の間に株価が1/3以下になるという経験をした。

動的価格設定にも同様のことが当てはまり、他人よりも多く支払わされている顧客たちが不公平だと訴えてくるのも時間の問題であり、それによってブランドの信用が失われてしまうという大きな問題が発生する。皮肉にも、何もしていなかったライバル企業が利益を得るということにもなってしまう。例えば、コストコは15%以上の値上げはしないと宣言している。

エアライン産業やホテル産業では動的価格設定が受け入れられてきているのに対して、小売業ではどうしてこのような状況にあるのであろうか。2つの重要なポイントとして商品・サービスの時間的消費制約と需要の不確実性が挙げられ、これに対応するためには、エアライン産業やホテル産業では動的価格設定を取り入れざるを得ないという事情がある。

また、オンライン小売業で動的価格設定を行っていると、顧客はオンラインショッピングサイトではなく、Orbitzなどのような各サイトの価格比較サイトをまず訪れるようになってしまう。

ただ、動的価格設定には需要に合わせた柔軟な価格設定というメリットもあり、ポイントはどのようにマネジメントするかという点にある。具体的には、動的価格設定を行っていることを正直に顧客に伝える、購入後に値段が下がっていることを発見した顧客には払い戻しを行う、変動させる価格帯に制限を設けるなどである。

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